第139号（平成26年1月）

　あけましておめでとうございます。昨年は最澄と空海の時代をお伝えしたかわら版。今年は最澄・空海後の仏教がテーマです。今月は平安仏教の変遷についてです。

★山法師、寺法師、奈良法師

最澄、空海は奈良時代末期から平安時代初期に活躍し、日本仏教の基礎を築いた双璧でした。

しかし、平安時代末期（十二世紀）になると天皇の力が弱まり、摂関家の専横、荘園領主の台頭、武士（桓武平氏と清和源氏）の登場、法皇・上皇の院政など、権力構造の混迷により治世は混乱の様相を強めていました。

最澄、空海の後、朝廷や地方にも一段と浸透していった仏教でしたが、平安時代末期には仏教も乱れます。

最澄の天台宗、空海の真言宗の系譜は続いていたものの、天台宗は山門派（比叡山延暦寺）と寺門派（三井寺＝園城寺）に分かれて対立。それぞれ山法師、寺法師と呼ばれ、興福寺僧兵の奈良法師とともに、権力闘争に介入し、暴れていました。

奈良時代末期、腐敗した南都（奈良）仏教を改めるために登場した最澄、空海の平安仏教。しかし、それも平安時代末期になり、朝廷や権力と結びついて再び退廃したということです。

★保元の乱、平治の乱

平安時代末期、天皇と上皇が対立し、源平両軍が入り乱れた保元の乱（一一五六年）、天皇と源氏に対して平氏が対立した平治の乱（一一五九年）を経て、武士（平氏）が台頭します。

しかし、その平氏も壇ノ浦の戦い（一一八五年）で滅亡。一一九二年、源頼朝が鎌倉幕府を開いて鎌倉時代が始まります。

この時期の僧のひとりが歌人として高名な西行（一一一八〜九〇年）。武士から出家し、鞍馬山や高野山に隠棲。讃岐国善通寺でも庵を結び、弘法大師の遺跡巡礼も行いました。

★浄土思想

権力闘争に加担する寺や僧兵の狼藉に嫌気した民衆は、平安時代を通して、徐々に新しい仏教の素地を生み出します。

天台宗や真言宗という権威よりも、来世では誰でも成仏できるという浄土思想が広がりました。

その端緒は空也（九〇三〜九七二年）まで遡ります。阿弥陀仏と念仏の教えを説いて洛中を行脚。市聖新（いちのひじり）、捨聖（すてひじり）と呼ばれ、民衆を引きつけました。

源信（九四二〜一〇一七年）は、多くの経典から極楽往生に関する重要な文章を集めた往生要集を執筆。

極楽往生するには、一心に仏を想い念仏を唱える以外に方法はないと説く源信。浄土教の基礎を創り、この書物で説かれた厭離穢土（おんりえど）欣求浄土（ごんぐじょうど）の精神は民衆のみならず、貴族や武士にも浸透（後に、厭離穢土欣求浄土は徳川家康の旗印にもなります）。

平安末期には良忍（一〇七三〜一一三二年）が融通念仏宗を開き、浄土思想がさらに拡がります。

腐敗した平安仏教から、再び新しい仏教が生まれようとしていました。

★鎌倉仏教

鎌倉時代に入ると、今日の宗派につながる鎌倉仏教が次々と登場します。

法然（一一三三〜二一二年）の浄土宗、親鸞（一一七三〜二六二年）の浄土真宗、一遍（一二三九〜八九年）の時宗、栄西（一一四一〜二一五年）の臨済宗、道元（一二〇〇〜五三年）の曹洞宗、日蓮（一二二二〜八二年）の日蓮宗が主要な六宗派と言えます。

★法然の浄土宗

来月は、南無阿弥陀仏と唱えれば誰でも極楽浄土へ往生できることを説いた法然の浄土宗についてです。乞ご期待。

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