耕平さんかわら版   30号(平成16年12月)

 

弘法大師と信託業法

 

皆さん、こんにちは。今年最後の耕平さんかわら版です。さて、十二月三日に閉会した臨時国会で、信託業法という法律を改正しました。僕の所属する財政金融委員会の担当です。僕自身、委員会や本会議で議論させて頂きました。この法律、実は弘法大師と深~い縁があります。

信託業法とは、信託に関するビジネスのルールなどを定めている法律です。「信託って聞いたことはあるけど、何のことかようわからんがね」という方もいらっしゃると思います。信託とは、皆さんが持っているお金や土地、株、その他の財産の管理・運用を、誰かに委ねることを意味します。財産だけでなく、遺言を誰かに委ねることも遺言信託と言います。

委ねる相手は、今まではもっぱら信託銀行でした。今回の法律改正で、信託銀行以外も信託業務を行えることになりました。信託という仕組みを、より広く活用していこうということです。今後はいろいろな信託会社が出てくると思いますが、もし活用される場合には、よく説明を聞き、皆さんご自身が納得して契約をしてください。何しろ、財産を預けるわけですから。

 

弘法大師はパイオニア

 

この信託という仕組みですが、ヨーロッパでは中世に登場しました。十字軍などで戦地に赴く人たちが、自分に万が一のことがあった場合に備え、家族や子孫が困らないように財産の管理・運用を第三者に委ねたのが始まりです。

さて、日本ではいつ登場したのでしょうか。実は、日本で最初に信託の仕組みを使ったのは、何と弘法大師です。弘法大師の京都での活動拠点は東寺でした。この東寺の隣に、弘法大師は西暦八百二十八年(天長五年)に芸種智院(しゅげいしゅちいん)という庶民の学校を創りました。この学校の土地は、所有者であった都の貴族が「私の土地を庶民のために運用してください」と言って弘法大師に委ねたものです。つまり、弘法大師が信託会社として土地を預かり、その後長年にわたって委託者の指示どおりに管理・運用したのです。思わぬところで弘法大師に遭遇し、僕もビックリです。小泉さん、こんなこと、きっと知らないでしょうね。今度、小泉さんに教えてあげようと思います。

さて、いよいよ年末です。皆さん、来年もどうぞよろしくお願い致します。よいお年をお迎えください。

 

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耕平さんかわら版   31号(平成17年1月)

 

既に人口減少?

 

明けましておめでとうございます。かわら版も今月号から足かけ4年目。今年もどうぞよろしくお願い致します。

さて、今日から通常国会が始まりました。介護国会と言われています。年頭に当たり、日本の将来、とりわけ介護を含む社会保障に重大な影響を与える人口問題について改めて考えてみたいと思います。

政府の人口見通しでは、2007年から日本の人口が減り始めます。ところが、過去の実績データは、常に政府の見通しより悪い結果になっています。このため、日本の人口は昨年中にピークアウトし、既に減少過程に入っているという見方もあります。

日本人口学会前会長で、人口経済学の権威、大淵寛中央大学教授によれば、現在の出生率の傾向が続くと、100年後には日本の人口はわずか950万人、現在の12分の1ぐらいになるそうです。ショッキングですね。

日本の歴史において、戦争、天災、飢饉などの特殊な事情以外で、人口が減少したことはありません。有史以来、初めての出来事です。

 

人口推計のやり直しが急務

 

昨秋の臨時国会で、厚生労働省が2050年の出生率を1.39と想定していることが明らかになりました。厚生労働省の出生率予測は過去に一度も当っていません。現在1.29のものが、どうすれば1.39に高まるのでしょうか。

僕がこの点を小泉さんに質問したところ、小泉さんは自分で答弁するのを嫌がり、厚生労働省の幹部に答弁させました。曰く、「様々な少子化対策が奏効し、出生率が回復してきます」とのことです。

今までに一度も効果を発揮していないのに、どうして今回だけ効果があると言えるのでしょうか。困ったものです。

厚生労働大臣の尾辻さんは個人的によく知っている方です。信頼できる人です。「人口推計をやり直し、そのうえで年金制度も介護制度も再検討すべきではないですか」という僕の指摘に対し、尾辻さんは「わかりました。やります」と答弁されました。尾辻さん、期待してますよ。

フランスでは、第3子以上の出産、育児に対する政策的配慮を手厚くしたことで、人口が増加に転じたと言われています。介護国会では、本格的な少子化対策の実施を政府に求めていきたいと思います。頑張ります。

 

 

 

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耕平さんかわら版   32号(平成17年2月)

 

深刻な財源不足

皆さん、こんにちは。立春が過ぎましたが、まだまだ寒い日が続いています。今頃になってインフルエンザも流行っているようです。くれぐれもご自愛ください。

さて、昨年10月12日、厚生労働省から唐突に障害保健福祉政策の改革案(グランドデザイン案)が公表されました。政府は今国会で所要の法改正が行う方針のようですが、利用者負担増を盛り込んだ改革案の内容を巡って、障害者や福祉関係者の皆さんから多くの問題点が指摘されています。

そもそも、ことの発端は平成15年度からスタートした支援費制度です。利用者には好評でした。しかし、好評であるということは利用量が嵩むことを意味します。支援費制度の財政負担は初年度から予算を大幅に上回り、2年目の今年度も既に400億円近い財源不足に陥っています。

 身体障害者352万人、知的障害者46万人、精神障害者259万人、日本全国で実に合計657万人。人口の5%、20人に1人の割合です。誰もが障害に見舞われるリスクがあります。不運にして障害を抱えた人たちを、如何にサポートするかという問題は全国民が共有すべき課題でしょう。

 

見通しの甘い厚生労働省

 それにしても、厚生労働省の見通しは甘いですね。青天井で制度をスタートさせれば、利用量が嵩むのは当然です。年金財政の見通しの甘さと共通する厚生労働省の体質を象徴しています。

 とは言え、財源不足に陥っている以上、利用者サイドの協力も不可欠です。何らかの工夫で公的支援のスリム化に取り組む必要があります。また、政府の懐具合についてもよく考えなくてはなりません。財源がないといいながら、地元自治体が反対するような整備新幹線を作ったり、利用者が伸び悩んでいる関空の2期工事を始め、さらには、伊丹、関空に続いて神戸空港を作ろうとしています。こうした無駄を省いたうえで、それでも財源が足りないかどうかを確認するのが先決です。

 小泉さんはどうも当てになりませんが、厚生労働大臣の尾辻さんは信頼できる人です。尾辻さん、社会保障制度の抜本改革、期待してますよ!!

 

 

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耕平さんかわら版   33号(平成17年3月)

 

皆さん、こんにちは。もうすぐ四月ですが、まだまだ花冷えの日もあります。くれぐれもご自愛ください。

 

ホリエモン騒動

 

ホリエモンこと堀江社長のライブドアと、日枝カイチョーひきいるフジテレビによるニッポン放送の買収合戦が賑やかですね。でも、「難しくてようわからんわ」とお感じの方も多いことと思います。どういうことでしょうか。

結論を先に申し上げれば、「どっちもどっち」です。ホリエモンの問題点はふたつ。ひとつは、ニッポン放送の株を時間外取引という手法で手に入れたこと、もうひとつは、ライブドアという会社が、株式分割という手品のような手法で資金力をつけてきたことです。もっとも、両方とも今の法律の下では、違法ではありません。但し、企業倫理的な是非は別問題です。

一方、日枝カイチョーの問題点はたくさんありますが、とりあえずふたつご紹介します。細かいことは申し上げませんが、ひとつは、ニッポン放送株の公開買付(TOB)の最中に目標を変えたことです。公開買付というのは、「いくらで、どれぐらい、いつまで、買いますよ」ということを約束することですが、その期限がくる前に、「どのぐらい」という目標を一方的に変えました。要は、約束を破ったということです。

もうひとつは、ニッポン放送が日枝カイチョーだけに新株予約権というプレゼントを約束したことです。専門家の話によれば、今の法律の下では、両方とも違法だという見方が多いようです。

このかわら版を読んで頂いている頃には、新株予約権発行の是非について、東京地裁のとりあえずの判断が示されていることと思いますが、皆さんはどのようにお考えでしょうか。

 

奇っ怪!金融庁、法務省

 

「どっちもどっち」のこの騒動。しかし、金融庁、法務省は日枝カイチョー寄りの姿勢を示しています。しかも、驚くべきスピードで迅速に対応しています。その一方で、オレオレ詐欺、インターネットによる詐欺請求、偽造カード事件など、ずいぶん前から指摘されている問題にも極めてユックリ対応してきました。この差は何でしょうか。奇っ怪ですね。どういう基準で対応を変えているのか、国会でよく聞いてみたいと思います。

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耕平さんかわら版   34号(平成17年4月)

 

皆さん、こんにちは。もうすぐゴールデンウィーク。気温も上がりますが、このところ、ガソリンも値上がりしています。車で遠出しにくいですね。

 

百五十兆円はどこに?

 

ガソリンの値段が上がっているのは、もちろん中東の原油価格が上昇していることが主因です。でも、原因はそれだけでしょうか。

実は、原油をはじめとした原材料価格の上昇の背景には、世界中で金融緩和が行われていることが影響しています。中でも、日本の金融緩和はダントツ、世界一です。

ゼロ金利政策とか、量的緩和政策とか、あまり馴染みのない言葉を新聞やテレビで見聞きされたことがあると思います。こうした世界的にも例のない超金融緩和政策が始まって既に十年。過去十年間の間に、本来であれば(=金利が正常な水準であれば)預金者や家計が得た利息収入は百五十兆円と言われています。谷垣財務大臣や福井日銀総裁もそれを国会で認めています。逆に言えば、それだけの所得を過去十年に失ったということです。たいへんなことですね。

さて、その百五十兆円はどこにいったのでしょうか。この十年、多くの銀行や企業の再建に公的資金が費やされました。面倒くさい理屈は省略しますが、超金融緩和政策でジャブジャブに供給されているお金は、世の中をグルッと巡って、間接的にそうしたところに回っていったということです。必要な面もあったでしょうが、弊害も小さくありません。

 

日銀が政府の資金繰り?

 

日銀は今も大量のお金を供給しています。ただし、日銀は銀行にしかお金を出せない仕組みになっています。

銀行がそのお金を企業や家計にドンドン貸してくれればいいのですが、残念ながら、そのお金の大半は国債の購入に回っています。

ジャブジャブのお金は、日銀から銀行へ、そして銀行から国債(政府)へ。ということは、要は日銀から政府に流れ、日銀が政府の資金繰りを助けていることになります。

法律では、原則として、日銀が政府の資金繰りを助けてはいけないことになっています。政府のムダ遣いにつながるからです。谷垣大臣や福井総裁はこのことをどのように考えているのでしょうか。

この問題も国会でたびたび議論されますが、なかなか改まりません。財政政策や金融政策の正常な運営が行われるように、引き続き議論を続けなくてはなりません。

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耕平さんかわら版   35号(平成17年5月)

 

みなさん、こんにちは。もうすぐ夏ですが、八月になると来年度予算の話が始まります。財政再建のためには税金のムダ遣いを徹底的に見直していかなくてはなりません。少し気が早いですが、夏を前に税金のムダ遣いを巡る怪談を一席。

 

中断されない干拓事業

 

今年一月、佐賀地方裁判所が諫早湾干拓事業(長崎県)の工事差し止めを命令しました。ところが工事はまだ続いています。怪しいですねぇ。潮止堤防の上を通る道路を近くの国道に接続する工事です。干拓事業全体が工事差し止めの命令を受けたのに、道路は造り続けています。合点がいきません。

農水省によれば、その道路は「ふるさと農道」という道路で、干拓事業とは別の事業だから中断しなくていいそうです。しかし、将来、仮に潮止堤防を元の状態に戻すという判断が下される場合、これから造る「ふるさと農道」もムダになります。干拓事業が中断された以上、この道路の工事もしばらく中断するのが合理的ではないでしょうか。

それにしても、干拓事業とは別の事業だから裁判所の命令に従わなくていいという理屈、まったくため息が出ます。こういう対応が税金のムダ遣いを生み出し、年金や医療や教育の財源を不足させる一因になっています。

 

幽霊道路

 

もっと怪しい話があります。実は、潮止堤防の上を通る道路は既に国道とつながっています。それをまた造るというのはどういうことでしょうか。あっちにもこっちにも同じ道路があるなんて、何だか幽霊のようです。まさしく怪談。なんと、既に完成している道路は国道との接続箇所がガードレールで閉鎖されています。なぜでしょうか。

農水省によると、既に完成している道路は国土交通省の定める基準に少しだけ抵触するので使えないそうです。だからこの道路を使わずに迂回路を建設します。迂回路というぐらいですからグルッと回る長い道路です。しかし、現地の写真をみるかぎり、幽霊道路は普通の道路、いやむしろ立派な道路です。まったく困ったものです。

連休前の参議院財政金融委員会で、谷垣財務大臣に「この話を聞いてどう思いますか」と質問しました。「いや~、不思議なことですね」という反応でしたが、谷垣さん、国民の税金を預かる大臣なんですから、しっかりしてくださいよ。この話題、来月も続編をお伝えします。

 

 

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耕平さんかわら版   36号(平成17年6月)

 

出生率一・二八八

 

二〇〇四年の出生率が発表されました。小数点二位までだと二〇〇三年の一・二九と同じですが、厳密に言うと一・二八八。また低下です。さて、どうしたものでしょうか。この問題、三つの視点に分けて考えることが必要です。

第一は人口減少そのものへの対策。これには女性が出産・育児を決断することの障害を取り除くことが有効です。たとえば、働いていた女性が退職して出産・育児に専念した場合の逸失所得は二千万円を上回ると言われています。復職しても非正規採用や年功賃金という壁があり、生涯所得の逸失分は相当の金額です。こういう点への対策を講じると効果があると思います。出産即人口増加ですから、第一の問題には即効薬になります。

第二は労働人口減少。第一の人口減少対策が効を奏して子供が増え始めても、その子供たちが成長して働き始めるのは二十年先。つまり、人口減少対策は労働人口減少対策の即効薬にはなりません。したがって、労働人口減少対策、とくに目先の対策としては別の内容を考えなくてはなりません。労働生産性向上、外国人労働者の受入れ、あるいは輸入品の活用などが考えられます。輸入品は海外で生産されますので、言わば間接的に外国人労働者を活用していることになります。さらに、今は働いていない人たちに働いてもらうという視点もあります。たとえば、OB世代、つまり高齢者の皆さんに元気なうちは働いて頂くという視点です。

この点は、第三の高齢者扶養の視点と関係しています。人口全体が減り、労働人口が減少しても、それで社会がうまく回るなら問題はありません。でも、実際はうまく回らないので少子高齢化が問題になっています。この対策は「高齢者を減らす」、「扶養負担を減らす」の二つしかありません。

「高齢者を減らす」ためには、高齢者の中でも働く人を増やすといったことが考えられます。また、働く人を増やすという対策には工夫の余地があります。所得が増えると年金が減るという今の仕組みは高齢者の働く意欲を低下させます。改善の余地ありです。元気に働くと健康を損なうことも少なくなり、「扶養負担を減らす」ことにもつながるかもしれません。

言うほど簡単なことではありませんが、こういうことを早急に考える必要があります。税金のムダ遣いも是正し、緊要度の高い社会保障制度に充当していくことも急務です。小泉さん、目的不明の郵政民営化や不用意な外交摩擦に時間を費やしている場合ではないですよ。

 

 

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耕平さんかわら版   37号(平成17年7月)

「結果」と「原因」

 皆さん、こんにちは。もうすぐ八月ですね。暑さや日差しにはくれぐれもお気をつけください。

ロンドンでテロ事件が起きました。犠牲になられた方々、家族の皆様、イギリス国民の皆様に心から哀悼の意を表します。テロは断じて許されないことです。しかし、現象面から言えば、テロは「結果」であり、その「原因」が解決されない限り、残念ながら完全になくなることはないでしょう。

テロリストの掃討は、言わば対症療法です。根治治療ではありません。もちろん、どんな「原因」があってもテロが正当化されるものではありません。しかし、テロという人類の苦しみを解決するためには、その「原因」を取り除く努力が必要です。容易なことではありません。ブレア首相やブッシュ大統領は、この点をどのように考えているのでしょうか。

テロリストは自分たちの行為をテロではなく正当な戦争と認識していることと思います。この認識ギャップもテロが続く「原因」のひとつです。そして、その背後には、認識ギャップを生んでいるさらなる「原因」があるのでしょう。深い洞察なくして、これらの「原因」を理解することはできません。小泉さん、難しいことですね。

イラクへの自衛隊派遣の現在の期限は今年の年末です。年末までにイラクに民主的な政府をつくることになっています。今の暫定政府も選挙の結果できた政府です。自衛隊はそろそろひと区切りつけて帰ってきてはどうでしょうか。長く滞在すれば新たな「原因」を作りかねません。日本国民の生命と財産の安全を守ることが使命の自衛隊の活動が、かえって日本国民の危険を高めるようでは本末転倒です。

まもなく八月十五日。戦後六十回目の終戦記念日を前に、「戦争」と「平和」の意味を改めてよく考えてみたいと思います。ブレア首相、ブッシュ大統領、小泉首相、そしてテロリストにも、よく考えて頂くことを願っています。