政治経済レポート:OKマガジン(Vol.63)2003.12.27

参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです


今年最後のメルマガです。今年もご愛読ありがとうございました。読者の皆さんが考えを整理するうえで、少しでも役に立つ内容をお届けできれば幸いです。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

1.不運な株主

11月29日、足利銀行に預金保険法102条1項3号措置が講じられることが決まり、同行は国有化されました。株主は多額の損失を被りました。

天皇誕生日の23日、宇都宮に行ってきました。民主党栃木県連の招請で、足利銀行問題に関する説明会で講演と質疑応答をさせて頂きました。

会場には99年と02年の足利銀行の増資に応じた多くの株主がきていました。「足利銀行は栃木県にとって必要だ。行員が熱心に出資を頼んでくるし、行員も一生懸命に銀行立て直しのために頑張るというので、意気に感じて出資に応じた」という県民の方ばかりです。「頭取をはじめ、信頼していた幹部が大丈夫だというから増資に応じたのに・・・」と憤懣やるかたない様子の方々も少なくありませんでした。

今回の3号措置は足利銀行の経営陣自らの申請によって行われたというかたちをとっています。ところが、経営陣は金融庁の対応に不満を表明していたと報道されています。自主的に申請したのなら、なぜ不満があるのでしょうか。なんか変ですね。

足利銀行は健全な内容の03年3月決算を公表していました(自己資本比率4.5%)。ところが、その決算を金融庁が検査したところ、自己資本比率はマイナス0.7%、つまり債務超過だったそうです。それを受けて経営陣は救済を申請したことになっています。

経営陣は金融庁の検査結果に納得していなかったようです。そりゃあ、そうですよね。県民の皆さんに「大丈夫」と太鼓判を押して増資をお願いしていたわけですから。納得していないのならば、また、県民の皆さんへの過去の説明に対する責任を感じているのならば、どうして金融庁と徹底的に事実関係を争わないのでしょうか。やっぱり債務超過だったのでしょうか。そうであるならば、どうして不満があるのでしょうか。

それにしても、3月決算はどちらが正しいのでしょうか。国会での閉会中審議において、竹中さんは「どちらも正しい」という不思議な答弁をしていました。ある時点における決算が同時にふたつ存在するなんて、変ですね、まったく。5月にりそな銀行の問題が起きた際には、「3月決算(自己資本比率2.3%)は実は債務超過かもしれない。再検査するべきだ」という指摘に対して、竹中さんは「決算はひとつしかない。既に公表されている決算が正しい」という答弁をしていたのに、今度は正反対のことを言っています。竹中さんの答弁はどちらが正しいのでしょうか。

2.幸運な株主

宇都宮に行った同じ日に、僕の地元、名古屋市では不思議なことが起きていました。中心部にそびえるテレビ塔の展望フロアから、お札をばらまいた奇特な人がいたそうです。

「株でもうかりすぎたので、使い道に困ってばらまいた」そうです。ほとんど無価値になっていた足利銀行の持株会社(あしぎんフィナンシャルグループ)の株を1円で取得し、15円で売却したそうです。つまり、元手が15倍になったということです。そりゃあ、もうかりすぎるはずですね。

その人自身は別におかしなことをしたわけではありません(お札をばらまいたことはちょっと変ですが)。幸運な株主と言えるでしょう。しかし、足利銀行を救いたいという思いから、経営陣の言葉を信じて増資に応じた株主が不運にみまわれ、国有化後の持株会社株に投機した株主が幸運に恵まれるという風景をみると、日本という国で生活していることが不運なのか、幸運なのか、よく分からなくなります。

正直者が馬鹿をみる。そんな国にはしたくないものです。真面目に対応した人が安心できる、そういう当たり前の国にしたいと思います。

それにしても、竹中さんはどうして持株会社の株を上場停止や取引停止にしていなかったのでしょうか。国有化された組織の持株会社の株が市場取引されている姿は、国有企業を私有している人がいるという構図を示しています。何か変ですね。それって、国有化という状態でしょうか。

本当に変な国になってしまいました。でもまあ、首相が変人ですから、変なことも変に納得できます。自分のカラーに国を染めている小泉さん、ひょっとするとスゴイ人かもしれません。変に感心してしまいます。

二枚舌の担当大臣、変な総理大臣、来年の通常国会はけっこうエキサイティングかもしれません。変にうれしくなってきました。

3.不運と幸運の分かれ目

栃木県民の不運は「大丈夫」という経営陣の言葉を信じたことです。本当に「大丈夫」かどうかを自分自身で確認できた県民はひとりもいなかったはずです。不確実な「期待」に基づく行動には高いリスクが伴います。

おおもうけした人の幸運は「1円」という底値で株を買ったことです。それ以上は下がらないという「事実」に基づいた行動だったからです。

過去の日本経済を振り返ると同じようなことが言えるかもしれません。自分ではコントロールできない地価や株価の値上がりに過大に「期待」した企業の多くは消えていきました。技術や品質という「事実」に基づいた堅実な経営を行った企業にはバブル崩壊やデフレの影響も小さいかもしれません。

政治や政策も同じような気がします。根拠のない不確実な「期待」よりも、厳然とした「事実」だけがリスクを軽減します。「変わるかもしれない」という「期待」よりも、過去に失敗を繰り返して「何も変わっていない」という「事実」を重んじることが必要です。

もちろん、日本経済再生のためには「期待」も必要です。しかし、根拠のない不確実な「期待」ではなく、根拠を確認できる「期待」です。来年の通常国会では、政府が国民の皆さんに示している様々な「期待」の根拠をしっかりと確認したいと思います。

今年もあと4日です。それでは皆さん、よい年をお迎えください。

(了)


戻る