政治経済レポート:OKマガジン(Vol.144)2007.5.8


参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです


13日(日)に後援会事務所の開所式を行います(広小路葵交差点から千早交差点に向かう途中。地下鉄新栄駅徒歩10分です)。是非ご参加ください。

18日(金)午後7時から、「どうなる日本、どうする日本」と題して岡田克也さんと僕のパネルディスカッションを開催します。コーディネーターは大学落研会の大御所、第12代安心亭立命こと伊藤享司さん。定員制・会費制(お弁当代、会場費)ですが若干お席が残っています。参加ご希望の方は事務所(052-757-1955、担当・川本卓)までお問い合わせください(E-mailでも構いません)。定員に達した場合には何卒ご容赦ください。

1.点滴と内臓疾患

今回は数字の多いレポートで恐縮です。先月下旬に発表された内閣府調査によると、上場企業が予想する2007-09年度の実質成長率は年度平均で2.1%。12年振りの高水準です。

この調査は今後3年間の予想をアンケートするもので、2001年度調査(0.6%)以降、5年連続で上昇。2.1%予想はバブル崩壊直後の1992年度調査(2.9%)に次ぐ水準です。

こうした予想を背景に設備投資や雇用で積極的な姿勢を示す企業が増加。今後3年間の設備投資の増加率予想は年度平均で5.3%。旺盛な設備投資が実質成長率を高めるのか、逆に、実質成長率が高いから設備投資に積極的になるのか。鶏と卵のような関係ですが、いずれにしてもずいぶん景気のいい話です。

同じく雇用者数の増加率予想は2.3%と調査開始(1992年度)以降の過去最高。団塊世代の大量退職、若年層の減少もあり、人手不足感を強めているようです。

こうした強気の見通しを支えている基本的な背景は円安。輸出企業の採算ラインの平均円ドル相場は106円60銭。現状の水準に比べなお10円以上の余力があります。企業努力の成果ではありますが、長引く超金融緩和政策が人為的な円安を生み出している面も否定できません。

日本経済を人間のからだに喩えれば、過剰とも言える点滴投与によって元気になっている状態と同じ。元気がないよりはいいですが、点滴が切れた時が心配です。内臓疾患は解決していないかもしれません。

2.天気晴朗なれど波高し

ところで、上述の調査によれば、今後3年間の名目成長率予想は年度平均で1.7%。実質成長率予想を0.4%下回っています。政府は2007年度経済見通しで実質成長率が名目成長率を上回る名実逆転が解消し、デフレが収束するシナリオを描いていますが、企業側の予想は正反対のようです。

日本の潜在成長率は1%台半ば。実質成長率が潜在成長率を上回ること、異常な超金融緩和政策が長期化していることを鑑みると、本来であればインフレ傾向が顕現化するのが合理的。

しかし、価格競争や技術革新の影響で販売価格が上昇しない一方、原材料などの仕入価格は上昇傾向。先行きの企業業績は予断を許しません。

日本経済の点滴依存体質、企業の先行き業績懸念などを反映し、日本株は欧米株に比べるとややもたつき気味。日経平均はここ数日急騰していますが、不安定な相場展開とも言えます。新興市場株は低迷したまま。チャイナショック後の動きがやや鈍いようです。チャイナショック前は3兆円を超えた売買代金(東京証券取引所第一部)も2兆円台で低迷。内閣府の調査結果とは少々ムードが異なるようです。

内閣府の調査結果を信頼すれば日本経済の天気は晴朗。しかし、点滴依存体質や株価低迷の背景を考えると波は高いと言えます。「天気晴朗なれど波高し」は日本海海戦の際に秋山真之中将が大本営に向けて打電した有名な文面。内閣府の調査結果が大本営発表=誇大広告でないことを祈ります。

3.玉虫色

月が替わって5月1日。今年1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値の民間調査機関15社による予測値が出そろいました。平均は実質で前期比0.7%、年率換算2.6%。昨年10〜12月期の同1.3%、5.5%に比べると減速しています。

評価はメディアによって区々。日経は「内外需かみ合い巡航成長」、朝日は「GDP減速、0.7%成長」との見出し。毎日、読売は事実関係のみを見出しにしています。実際、評価は難しいと思いますが、一番のポイントは潜在成長率(実質ベース)を超えるか否か。

上述のように、日本の潜在成長率は1%台半ば。民間調査機関の予測値はこれを上回っています。実質成長率が潜在成長率を上回る場合、本来であればインフレ傾向となるのが合理的。しかし、最近はその原則が当てはまりません。

現に1〜3月期の名目ベースの予測値は前期比0.5%、年率換算2.2%。やはり名実逆転は解消しないとの見方。2007年度のデフレ収束シナリオの実現は容易ではありません。

政府が楽観的なシナリオを示すのに対し、民間は厳しめの予想。そこで、客観的な立場の日銀の役割が重要視されます。民間調査機関の予測値が出た同じ日、日銀の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」が公表されました。

それによると、2007年度の消費者物価指数の見通しは0.1%。前回(半年前の昨年10月時点)の見通しでは0.5%。0.4%ポイントの低下です。国内企業物価指数は同0.7%、前回見通し(1.2%)に比べ0.5%ポイントの低下です。

政府がデフレ収束のシナリオを描いているのに対し、民間はデフレが続くとの見通し。そこで、日銀はその中間をとってゼロ近傍(0.1%)を予測。実にうまくできた構図です。玉虫色の見解とも言えます。

日銀レポートには補足すべき点があります。ひとつは半年前よりも物価の見通しが大きく下回った理由。もうひとつは各審議委員の見通しの根拠。消費者物価指数の予測レンジ(審議委員のバラツキ)は0.0%〜0.2%。

水晶玉を睨んで決めているのでなければ、それぞれの根拠を明確にするべきでしょう。結論は玉虫色、根拠は不明確では困ります。

(了)


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