耕平さんかわら版   222号(令和2年12

  

 

 皆さん、こんにちは。気がつけば師走、今年もあとわずか。早いですねぇ。年末のご多忙な中、体調を崩されぬよう、くれぐれもご自愛ください。

 かわら版では日常会話の中に含まれている仏教用語をご紹介しています。知らず知らずのうちに使っている仏教用語。それだけ日本人の生活に溶け込んでいるということです。

 どこの家でも年末の恒例は大掃除。普段はあまり掃除しないところも年に一回は念入りにお掃除されることと思います。最後は玄関を整え、門松を立てて新年を迎えます。

 この「玄関」も仏教用語です。

 「玄関」の「玄」は「深い覚(悟)り」を意味します。深い覚りである「玄妙(げんみょう)」に入るための「関門」という意味を表すのが「玄関」。つまり、覚りへの入口です。

 鎌倉時代になると、禅宗が発展しました。禅宗では、覚りを開くための道場である寺院の入口のことを「玄関」と呼ぶようになりました。

 その頃の家は、公家、武士、庶民のいずれも、屋敷や家に明確な出入口はなく、縁側のようなところから出入りするのが普通だったそうです。

 室町時代から戦国時代に時代が進むと、公家や武士の屋敷では、訪問者を恭(うやうや)しく送迎したり、訪問者に威厳を示すために、禅寺を模して「玄関」が登場しました。

 高位の公家や勢力を誇る武士の屋敷は立派な門構えとなり、大規模な門と「玄関」が発展していきました。

 一方、町人や農民には「玄関」は許されなかったそうです。現在のように、庶民の家、普通の家の出入口も「玄関」と呼ぶようになったのは江戸時代以降のことです。

 毎日、覚りへの入口、すなわち「玄関」を通っていることに気づくと、神妙な気分になりますね。家の内でも外でも、感謝の気持ちを忘れずに、覚りを開けるように自らの気持ちを引き締めて身を律する瞬間が玄関を通る時です。

 「玄関」をきれいに掃除して整え、気持ちよくお正月を迎えたいですね。お正月と言えば「おせち料理」。「おせち料理」は「御節料理」と書きます。「御節」も仏教用語と言いたいところですが、これは違います(笑)。

 公家の行事である「節会(せちえ)」の習慣が庶民にも広がり、「おせち料理」と呼ばれるようになりました。

 料理を作る場所は、普通の家では台所。お寺の台所のことを「庫裏(くり)」と言います。仏教寺院における伽藍のひとつです。「庫裡」とも書きます。どちらも「うち」や「なか」を意味する漢字です。

 お寺の住職の奥さんのことを「おくりさん」と呼ぶのは、この「庫裏」に由来します。かつてはお寺の食事係の僧を「お庫裏さん」と言ったので、必ずしも奥さんのことだけを指したわけではありません。禅宗では食事係は「典座(てんぞ)」とも言われます。

 さてさて、こんなことを書き続けていると、年末の大掃除も手が回らなくなります。このあたりで切り上げて、片付けにかかりましょう。

 それでは皆さん、良い年をお迎えください。

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