耕平さんかわら版   236号(令和 4年2

  

 

 皆さん、こんにちは。立春も過ぎ、春が待ち遠しい季節になりました。でもまだまだ寒い日が続きます。コロナも含め、くれぐれもご自愛ください。

 かわら版では日常会話の中に含まれている仏教用語をご紹介しています。知らず知らずのうちに使っている仏教用語。それだけ日本人の生活に溶け込んでいるということです。

 もうすぐ花見のシーズン。梅や桜の醍醐味(だいごみ)を満喫したいですね。と言って使った「醍醐味」も仏教用語から来ています。

 お釈迦様の時代のインドでは乳製品は大切な食べ物でした。お釈迦様が苦行から解放されたあとに、川で沐浴して体を癒している時にスジャータという娘から勧められたのも乳粥です。この話に因んでコーヒーミルクにスジャータという商品名がつけられました。

 牛乳は精製、発酵段階ごとに、最初は乳(にゅう)、次が酪(らく)となり、それが生酥(しょうそ)となり、さらに熟すと熟酥(じゅくそ)、最後が醍醐(だいご)の五味(ごみ)と呼ばれます。つまり、乳製品の最終段階、最上、最高で美味なのが「醍醐」です。

 外国人の多くは、見た目、臭い、味、いずれも「こんなもの食べられない」という先入観に囚われます。それは、意つまり心が「こんなもの食べられない」という情報を発信しているからです。

 五味はお経の中にも登場します。「大般涅槃経」の一節である「五味相生の譬(たとえ)」には「牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生蘇を出し、生蘇より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出す、醍醐は最上なり。もし服する者あらば、衆病皆除く」と説明したうえで、次のように続けます。

 「仏もまたかくの如く、仏より十二部経を出し、十二部経より修多羅を出し、修多羅より方等経を出し、方等経より般若波羅密を出し、般若波羅密より大涅槃経を出す」。

 つまり、大涅槃経は乳製品の「醍醐」と同じように最上、最高、真の教えであると説いています。「五味の喩え」と言われます。

 「醍醐」のこのような位置づけから「醍醐味」という言葉が生まれ、物事の本当の面白さ、深い味わい、真髄、魅力を意味するようになりました。

 余談ですが、子どもが大好きな飲料「カルピス」の商品名もこの話と関係が深いのです。

 サンスクリット語では「五味」の第四段階の「熟蘇」のことを「サルピス」と言います。「熟蘇くらい美味しい乳酸菌飲料」という意味を込めて「カルシウム」+「サルピス」=「カルピス」となったそうです。命名者は仏教学者の渡辺海旭師であると聞きました。

 第五段階(最上)の「醍醐」のサンスクリット語「サルピルマンダ」と合成して「カルピル」との案もあったそうですが、語感が微妙なので「カルピス」に落ち着いたそうです。

 古代の製法の記録が残っていないので「醍醐」は謎の乳製品ですが、牛乳→ヨーグルト→バター→その先が「醍醐」です。コクと栄養のある高価な乳製品の真髄、真骨頂、すなわち「醍醐味」です。カッテージチーズのようなものと聞いたこともあります。

 日本でも平安時代に皇族や貴族が食していたと言われています。また「醍醐」の前段階の、「熟蘇」に近い乳製品は現存し、濃厚な味わいでワインともよく合うそうです。「熟蘇」は平安時代には税の代わりとして納められた貴重品です。

 コロナ禍も丸二年、足かけ四年、花見のみならず、旅行やパーティなどの「醍醐味」を満喫できる日が待ち遠しいですね。ではまた来月。

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