耕平さんかわら版   246号(令和 4年12

  

 

皆さん、こんにちは。早いもので師走です。寒くなりました。くれぐれもご自愛ください。

かわら版では日常会話の中に含まれている仏教用語をご紹介しています。知らず知らずのうちに使っている仏教用語。

それだけ日本人の生活に溶け込んでいるということです。

今年はサッカーワールドカップで盛り上がりました。

サッカーに限らず最近の若いスポーツ選手は「絶対に勝ちます」「負ける気がしません」「自分が決めます」等々、自信満々の受け答えをします。

昔だったら「そんなホラを吹いて」と言われそうな発言ですが、有言実行だから凄いですね。

水泳の北島選手あたりから、若いスポーツ選手の発言が変わってきたような気がします。

練習の裏づけがあればこその自信ですね。

この「ホラを吹く」という表現も仏教用語です。

「螺」とは巻貝。

大きな巻貝に穴を開けて音を吹き鳴らす道具が「法螺(ほうら)」です。

やがて短縮されて「ホラ」と言うようになりました。

法螺を作る巻貝が法螺貝。

サンスクリット語で「サャンクハ」と言います。

古代インドでは戦場の出陣の合図として「法螺」が使われました。

シルクロードを経て唐に伝わった法螺を密教僧が日本に持ち込みました。

主に真言宗や天台宗の法会で使われるようになり、やがて東大寺のお水取り(修二会)でも吹かれるようになりました。

山伏の携える道具としても浸透し、山中で吹けば野獣を追い払い、魔を退けると信じられました。

お経にも登場します。

無量寿経には「法鼓(ほっく)を扣(たた)き、法螺を吹く」、法華経にも「大法螺を吹き、大法鼓を撃ち」と記されています。

大無量寿経では、お釈迦様が衆生(人々)に教えを説く場面に「法螺を吹く」という表現が出てきます。

すなわち「法螺を吹く」とは本来「仏の説法」のことを指します。

説法の場に人々を集めるための合図として法螺貝を吹いたことに由来します。

法螺貝の音を聞いて集まってみたものの、法螺を吹いたお釈迦様の弟子たちの話は大したものではありませんでした。

「お釈迦様のように偉そうにものを言う」という意味に転じ、やがて「嘘をつく」という含意になったそうです。

本来「法螺を吹く」のはお釈迦様。弟子や衆生(人々)がホラを吹く、すなわちお釈迦様の説法を真似て立派なことを語っても実行が伴わないのが常。

そういう文脈でも「ホラを吹く」は「ウソをつく」を意味しました。

ちなみに「仏語(ぶつご)に虚妄(こもう)なし」と言い、お釈迦様は嘘をつきません。

雄弁に演説することを「獅子吼(ししく)」と言います。

この「獅子吼」も実はお釈迦様の説法のことを指します。

つまり仏教用語。

ついでに「演説」も仏教用語です。

世の中、仏教用語だらけですね。

「絶対大丈夫」と大言壮語して、そのとおりにならなかった時に「ほら、見てごらん」という時の「ほら」も「法螺」に由来するとの説もあります。

「ホラ」かもしれません(笑)。

今年もいよいよあとわずかです。

来年は「絶対に良い年になる」と法螺を吹くわけにはいきませんが、そう願って新年を迎えたいと思います。

来年もかわら版をご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。それでは皆さん、よい年をお迎えください。

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