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耕平さんかわら版    262号(令和6年4月

  

 

皆さん、こんにちは。五月になりました。清々しい季節ですが、季節の変わり目です。くれぐれもご自愛ください。

かわら版では日常会話の中に含まれている仏教用語をご紹介しています。知らず知らずのうちに使っている仏教用語。それだけ日本人の生活に溶け込んでいるということです。

四月と言えば、入社の季節。「あの新入社員は融通がきくね」「彼は融通がきかないな」などという会話が飛び交いますが、「融通がきく」とは、物事を「滞りなく進める」「うまく運ぶ」ことを意味します。

季節の変わり目は体調を崩したり、油断して風邪をひくこともあります。風邪のひきかけに出るのは「クシャミ」です。

クシャミについて「一に褒められ、二に腐(くさ)され、三に寒さの風邪を引く」という言い方があります。クシャミを一回すると「誰かが悪い噂をしている」、二回だと「良い噂をしている」、三回は「風邪の前兆」ということですね。この「クシャミ」。実は仏教と関係のある言葉です。

その昔、インドでは「クシャミ」をすると命が縮むと云われていました。ある日お釈迦さまがお弟子さん達の前でクシャミをされ、それに驚いたお弟子さん達が皆で「クサンメ、クサンメ」「クッサメ、クッサメ」と何度も唱えたそうです。

「クサンメ」「クッサメ」はサンスクリット語で「長寿」という意味です。お釈迦さまが「クシャミ」をしたので、弟子たちが「尊師さま、ご長寿、ご長寿」という感じで「クサンメ、クサンメ」と唱え、お釈迦さまの健康を願ったのです。いつしか「はくしょん」と言う生理現象が「クサンメ」転じて「クシャミ」という言い方に徐々に転じていったというのが「クシャミ」の語源です。

日漢字では「くさめ」は「嚔」という難しい文字を当てます。歌舞伎ではクシャミのことを「くっさめ」と原語に近い表現で言うそうです(と聞きました)。

日本でも古来、「クシャミ」は「誰かが自分のことを噂している」というように捉えられたほか、「寿命が縮まる」とも考えられました。中世の文献には「クシャミ」は「鼻をから魂が抜け出すもの」と記されたものもあり、「クシャミ」をすると「早死にする」という俗信がありました。死魔を追い払うために唱えられた呪文がサンスクリット語の「クサンメ」に端を発した「くさめ」です。

「糞食らえ(くそくらえ)」を意味する「糞食め(くそはめ)」の縮まったものという異説もあります。あんまり品が良くないですね(苦笑)。

クサンメ」は日本語で「休息万命(くそくまんめい)」「休息万病(くそくまんびょう)」と音写され、これを早口言葉で何度も言うと「クサンメ」「くさめ」になるとも言います。一度やってみてください。僕はなかなかそうなりません(笑)。

「吉田兼好の「徒然草」の一説にも「道すがらくさめくさめと言ひても行きければ」というくだりがあります。「くさめ」は道中の病魔から逃れるための呪文「休息命(くそくみゃう)」を早く言ったものという説もあります。

「はくしょん」という生理現象が「クシャミ」と表現されるのはよく考えると不思議ですね。「クシャミ」の語源にこんな難解な背景があるとは知りませんでした。五月とは言え、朝晩は冷え込む日もあります。「クシャミ」にお気をつけください。ではまた来月。

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