参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです
今、14日の午前1時半です。昨日は統一地方選挙の投票日でした。開票結果を見届けて帰宅したところです。昨年の夏まで秘書として僕を支えてくれた森井元志さんが無事に県会議員選挙で当選させて頂きました。ご支援、ありがとうございました。国会、県議会で連携して、初心を忘れずに改革に取り組んで参ります。
産業再生機構が正式に誕生しました。産業再生機構が有効に機能して、日本の産業再生に寄与することを期待します。
しかし、どうも日本の経済政策は内容がチグハグです。産業再生についてもそうなる危険性があります。
産業再生機構は、過剰債務を抱えたり、事業が立ち行かなくなった企業の再建を目指します。しかし、本来の使命は「企業の再生」ではなく「産業の再生」です。この点を堅持できるかどうかがポイントです。
安易な債務免除で特定の「企業」を救済すると、その「企業」が本来の実力以上の価格競争力を持ち、自力で頑張っている同業他社の業績を圧迫する可能性があります。過度な価格競争は「産業」全体の収益性を低下させ、その「産業」に属する「企業」をかえって弱らせてしまう危険性があります。とくに、自力で頑張っている「企業」にとっては、まったく迷惑な話です。
産業再生機構が、どの「企業」を、どのような基準で選択するのか、そして、その「企業」を救済することが本当に「産業」の再生に繋がるのか、これらの点を厳しく監視していく必要があります。
もし、特定の利害関係を背景に特定企業を救済するようなことがあれば、産業再生機構は「マッチポンプ機構」と言えます。「産業を再生する」という大義名分で特定企業を救済するという「マッチの火」をつけて、その一方では、過当競争を招来して「産業全体を弱体化させる」という「ポンプの水」をかけるようなものです。
「マッチポンプ」のようなチグハグな動きにならないように、今後も注視していきます。
株式の持ち合いは日本経済の構造的特徴です。銀行と企業がそれぞれ株式を持ち合い、「もの言わぬ安定株主」になるという構造です。
株主から短期的な業績向上を求められることなく、安定的な経営、長期的な視野に立った経営を行うことができるというメリットもありました。
しかし、その一方で、経営者は株主から業績を厳しく問われることがなく、低い配当性向が定着してしまいました。経営者の緊張感も弛緩してしまったと言えます。個人株主の利益や意見は軽視され、個人投資家の足を株式市場から遠のかせる原因となりました。
また、株式持ち合い制度を背景にして銀行や企業が大量の株式を保有すると、株価変動リスクに晒されて経営が不安定になります。
このため、経営のリスク軽減、及び株式市場の活性化(個人投資家の株式投資促進)を企図して、株式の持ち合い解消が日本経済の構造改革の大きなポイントになっています。もっともなことです。
ところが、銀行や企業の株価変動リスク軽減という名目で、銀行等保有株式取得機構という何だか難解な名前の組織や日銀が、銀行や企業から株式を大量に購入しています。機構や日銀は取得した株式を長期間保有することになっているため、言わば「新たな安定株主」になっています。
株式持ち合い解消による日本経済の構造改革という「マッチの火」をつける振りをしながら、その一方で、機構や日銀が「新たな安定株主」になるという「ポンプの水」をかけるようなチグハグなことを行っていては、とてもマトモな経済政策とは言えません。
日本経済の良心であるべき中央銀行(日銀)が、そうしたチグハグな政策行動の片棒を担いでいることは、とりわけ頂けない話です。
政府・日銀は、このところ円安誘導のための為替介入を行っているようです。円安誘導には賛成です。しかし、なかなか思うように円安になりません。どうしてでしょうか。日本経済が磐石だから円買いが減らないのでしょうか。今の日本経済の状況を考えると、そんなはずはないですね。
実は、チグハグな経済政策によって日本経済がなかなか立ち直らないことが円高傾向を生み出しています。
「バーゲンセール」を思い浮かべてください。バーゲンだとついつい余計な買い物をしてしまいますよね。今の根強い円高傾向には、「日本経済のバーゲンセール」が続いていることが影響しています。
「日本経済のバーゲンセール」とは、日本の不動産や企業などが安値で外国人投資家に売却されていることを意味します。
上述の「1.産業再生」、「2.株式持ち合い解消」で指摘したようなチグハグな経済政策が是正されて日本経済が健全な姿になれば、不動産価格や企業価値は上昇し、「バーゲンセール」は終わるはずです。
しかし、残念ながら現実はそうはなっていません。むしろ、日本経済再生のために外資を導入するという発想で経済政策が組み立てられています。言わば、経営が立ち行かなくなった日本株式会社が、資金繰りや資産圧縮を企図して「バーゲンセール」を行い、何と競争相手の米国株式会社や中国株式会社に安値で資産売却を行っているという構図です。
売却対象資産の潜在的価値は高く、米国株式会社や中国株式会社はそのことに気がついています。だから、資産購入のための円資金を調達する需要が減らないのです。
一方、日本株式会社自身は、売却対象資産の潜在的価値を顕現化させる経営手腕に欠けています。チグハグな経済政策を行っているのですから、当然と言えます。
円安誘導という「マッチの火」をつけながら、その一方で資産の叩き売りという「ポンプの水」をかけていては、思うように円安が進まないはずですよね。
何やらチグハグな経済政策ばかりです。政策間の論理矛盾を冷静に認識し、適切な政策選択を行うことが求められます。「マッチの火」をもっと勢いよく燃やすためには「水」ではなく「油」をかける必要があります。勇気をもって「油」をかけなくてはなりません。
そして、ここでの「油」とは、産業再生機構がその名のとおり「産業」の再生に特化すること、銀行等保有株式取得機構や日銀が「新たな安定株主」になることを止めることです。日本株式会社の経営陣の「勇断」と「有言実行」が求められます。
(了)