参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです
岡田新代表が誕生しました。日本の政治史において、キャリア官僚出身者が野党党首になるのは初めてのことだと思います。官僚制度には功罪相半ばする評価がありますが、岡田新代表は日本をリードしてきたキャリア官僚の「良い面」を発揮して頂ける方と期待しています。僕も全力で職務に精励したいと思います。
中部経済界が元気です。トヨタ及びトヨタ関係企業をはじめ、名古屋周辺には何代も続く老舗企業やこれから何代も続きそうな有望企業がたくさんあります。ソニーの盛田さん(高校の大先輩)を輩出した盛田酒造、松坂屋、リンナイ、パロマ、メニコン、ミツカン、タキヒョー、瀧定、岡谷綱機、メナード、西濃運輸、INAX(イナックス)など、数え切れないぐらいです(記載できなかった企業の皆さん、申し訳ありません)。最近では、域外から本社を移転する動きも出始めました。奈良県の森精機は2006年に本社を名古屋駅前に移転するそうです。そういえば、岡田新代表の実家のイオン(旧ジャスコ)グループもありました。
全ての企業の実情を詳しく知っているわけではありませんが、経済界の皆さんのお話を伺う限り、共通して言える好調の秘訣は「堅実経営」ということのようです。
「堅実経営」というイメージは、中部圏以外の方々からは「名古屋人はケチだから」と表現されることが多いです。大阪商人は「まけてんか?(変な大阪弁でスミマセン)」と言ってトコトン値切るのに対し、名古屋人はトコトン値切った品物を仕入れ当日に「もうちょっとまけてちょ?(河村たかし議員<高校の先輩です>のような極端な名古屋弁でスミマセン)」と言ってさらに値切ると言われています。
しかし、地元出身の僕が、これまで多くの経営者の皆さんから聞かせて頂いた話などから感じる「堅実経営」のイメージは、「ケチ」が本質ではありません。トヨタ式経営に代表される中部経済界の「堅実経営」は、「無駄な支出をしない」、「不必要なことで飾らない(見栄をはらない)」、そして「私物化しない」、「お得意さま(地元)を大事にする」というごくごく当たり前の特徴ばかりです。これは率直な印象です。ひと言で整理するとすれば、「合理的」ということです。
コンサルタントとの付き合い方にも、東京の企業と傾向的な違いが感じられます(全てがそうだとは言いません。傾向的に感じられることです)。東京の企業では、コンサルタントに自社の経営を欧米の標準と比べてもらい、その評価に一喜一憂している感じがします。一方、中部経済界の老舗企業は、コンサルタントの評価結果の中から「合理的」と感じられる部分のみを「なるほど、なかなかだがや(名古屋弁です)」と言って取り入れます。
「困った時にコン(来ないという意味の名古屋弁)、困った時にサル、銭はタントとられるコンサルタント」などと言う人もいます。コンサルタント業界の皆さんにとっては、「中部を征する者は日本を征す」というところでしょうか。
そうした中で、UFJ銀行(旧東海銀行)の元気がありません。どうしてでしょうか。「無駄な支出をしない」、「不必要なことで飾らない(見栄をはらない)」、「私物化しない」、「お得意さま(地元)を大事にする」という当たり前の「合理的」基準で経営をチェックしてもらいたいものです。
どうも古くからの取引先に対して厳しい対応が目に付くようです。取引先の皆さんからは「お得意さま(地元)を大事にする」とは見られていないようです。むしろ逆です。一段と「雨の日に傘を取り上げ、天気の日に傘を貸す」ような融資行動が目立つそうです。「合理的」ということは、「儲かればいい」ということではありません。
新しい日本型経営を検討する際には、米国型経営ばかりでなく、中部型経営も研究する必要がありそうです。
「合理的」というキーワードで考えると、この週末の大ニュースである北朝鮮拉致家族の皆さんの帰国にも気になる点があります。もちろん、5人の方が帰国できたことは喜ばしいことです。それ自体は素直に評価したいと思います。
そもそも、ここまで拉致被害者の数が増えた原因は何でしょうか。焦点になっている10人だけではなく、実際には数百人とも言われています。拉致問題は1960年代から指摘されていました。被害者の家族の皆さんは、その当時から政府に調査を要求していたそうです。ところが、つい最近まで政府は「拉致の事実はない」という姿勢を維持してきました。なぜでしょうか。
過去において、政府高官や政治家の中に、北朝鮮と親密な関係にあり、不正な資金を受け取っていた者がいるということです(現在がどうかはよく分かりません)。そのことと引き換えに、拉致問題を不問に付していたのです。要は、弱みを握られていたのですね。
そういう者が、現在の北朝鮮との交渉に当たっている政府高官や政治家、あるいは政権中枢にいないのでしょうか。もしいるとすれば、弱みを握られているのですから「合理的」な交渉ができるはずがありません。
「合理的」と言えば、このメルマガで何度もお伝えしている「目的」と「手段」の関係からもチェックする必要があります。政府の仕事の「目的」は、国民の生命と財産の安全を守ることです。外交は、とりわけ純粋にその「目的」を追及する「手段」であるはずです。もし不純な「目的」が混在すれば、「手段」が正しく行使されることはなく、「結果」も歪んだものになります。交渉の背景では不公正な取引が行われることでしょう。
そもそも、この時期に北朝鮮を訪問したのは何故でしょうか。準備不足で時期尚早という見方が与党からも指摘されています。
小泉首相、及び官邸を取り仕切っている飯島秘書官を巡って様々な疑惑が流れています。巷間言われているのは、そうした疑惑から世論の目をそらすために、あえてこの時期に北朝鮮を訪問し、「メディアジャック」を狙ったということです。それが本当であるとすれば(もちろん僕は本当だと思っていますが)、小泉首相は何と背信的な政治家、いや政治屋でしょうか。
外交までも政権維持の「手段」にしているとすれば、言語道断です。拉致被害者やその家族の皆さんに対する冒涜です。
今の外務省、政権関係者に、過去の取引に関連して北朝鮮側に弱みを握られている人がおり、おまけに時の首相が外交に不純な「目的」を持ち込んでいるとすれば、正しい「手段」として外交交渉が行われるはずがありません。「合理的」な外交成果を期待できるはずもありません。
食糧25万トン、医薬品1000万ドル相当の支援の「表ガネ」のほかに、いくら「裏ガネ」が渡ったのでしょうか。全て国民の皆さんの税金です。困ったものです。
合理的な外交を行うためには、どうしたらいいのでしょうか。
仮にそういう人たちが外務省や政権の最前線から退いたとしても、その仲間が後を引き継ぐ限り、裏取引や合理的でない外交の呪縛から逃れることはできません。外務官僚や与党政治家が全て悪いとは言いません。真面目な人、有能な人、期待できる人も、もちろんいます。しかし、外務省や自分の所属する政党を守ろうとする限り、どんなにいい人が登場しても、裏取引や合理的でない外交の呪縛から逃れることはできません。
それでは、国民の皆さんはどうすればいいのでしょうか。合理的な外交を実現するための「手段」、国民の皆さんの生命と財産の安全を守るという「目的」を実現するための「手段」、それは政権交代です。
政権交代は、国民の皆さんにとって選択可能な政策の「手段」であることを、今こそご理解頂きたいと思います。
5年おき、あるいは10年おきに本格的な政権交代が起きることで、過去の不正や裏取引が明るみに出て、関係者は摘発されることになります。そうしたことが繰り返されることで、次第に不正を行う人たちが少なくなります。なぜなら、政権交代後に摘発されることを恐れるからです。
もはやイデオロギー対立の時代ではありません。税金の無駄遣いと不正を少なくするための「手段」が政権交代です。
政権交代のない政治とは、罰則のない交通ルールや刑法のようなものです。罰則がなくて、どうして速度制限を守ったり、事故を起こさないようにしようとするでしょうか。もちろん、読者の皆さんの中には、「私は罰則がなくても倫理的にルールを守る」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、そういう人ばかりで政治が行われているわけではないのが現実です。
合理的な経営も、経営者があまり長く居座ると弊害が目立ってきます。合理的な選択こそが、合理的な経済や政治を生み出すことを信じて、岡田新代表とともに二大政党の一翼を完成させたいと思います。
(了)