参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです
昨日(24日)、所属する行政監視委員会で初めて「苦情請願」が採択されました。行政の怠慢や不適切な運営によって権利の侵害を被った人の訴えを審査するのが「苦情請願」。1998年に制度ができて以来、初めての採択です。どんな苦情でも受理、採択される訳ではないですが、この制度が有効活用されて行政の質が向上し、行政に対する国民の信頼が高まることを期待したいものです。
「不良債権処理は終わった」、「大手銀行、過去最高益」、「大都市圏の地価上昇」、「株価本格上昇局面」・・・、何だか景気のいい話ばかりが聞こえてきます。「景気は気から」とも言いますので、ウソでも景気がいいと思い込むことも必要かもしれません。
景気回復が本物であることを祈りますが、ここは冷静に分析してみることも必要です。今回は、オーソドックスに景気の現状について整理してみたいと思います。
現在の景気回復局面は2002年2月から始まっています。既に45ヶ月連続。これは、いざなぎ景気の57ヶ月(1965年10月から1970年7月)、バブル景気の51ヶ月(1986年11月から1991年2月)に次ぐ、戦後3番目の長さです。
いざなぎ景気やバブル景気を経験された方々は、その当時と比較して、現在の景気についてどのような印象を抱かれるでしょうか。
僕もバブル景気を経験しましたが、その当時と比較すると、現在は好景気とは思えません。それもそのはず、バブル景気の折は名目GDPが約10%増加。いざなぎ景気の時は20%以上の増加です。
では、現在はどうでしょうか。2001年の名目GDPは501兆円、現在は505兆円。約1%の増加にとどまっています。
昭和時代の基準であれば、この間の45ヶ月間は景気回復局面と定義されないかもしれません。「失われた15年」を経て、「平成時代の景気判断基準は変わった」とハッキリ言ってもらった方がスッキリします。
ところで、戦後の日本経済は、景気回復の波及プロセスにパターンがありました。まず企業業績が良くなり、それが社員の雇用増加と所得増加に波及。社員の懐が潤うと、消費や住宅投資が活発化するというパターンです。
さて、今回も同様のプロセスで進んでいるのでしょうか。たしかに企業業績は良くなりました。しかし、その多くが社員のパート化、リストラによる経費削減に依存しています。つまり、従来のパターンが当てはまりません。
しかも、今や日本は飽食時代。かつてほど買いたい物がないうえに、将来不安もあって財布の紐は緩みません。少子化で住宅投資にもクエスチョンマーク。
そんな中、政府は、定率減税の廃止や消費税率引き上げの動きを進めています。選挙公約に違反していることは、この際忘れましょう。問題は、それで本当に景気は大丈夫ですかということです。
小泉さんに是非聞いてみたい。増税路線を打ち出しても、戦後3番目の長さに及ぶ力強い景気回復には影響ないという認識でしょうか。
でも、不良債権の減少も銀行の過去最高決算も、コストゼロの公的資金の恩恵があったことは否定できません。本当にこんなタイミングで大丈夫でしょうか。
因みに、増税路線で景気を失速させた橋本政権当時、失業率は3.3%、今は4.3%です。日経平均株価は、橋本政権当時は18000円前後、今は13000円。橋本さんも構造改革に取り組みましたが失敗しました。小泉さんは「構造改革は成功した」との自己評価。せめて株価が橋本さんの頃より高くなってほしいものです。
ところで、小泉政権下では国債発行額が約200兆円増加。なるほど、景気の下支えは国債発行による財政政策でしたか。納得です。
でも、ちょっと変。小泉さんは財政再建に取り組んでいたはずですが・・・。いやいや、それも納得。去る13日、郵政民営化特別委員会で小泉さんと質疑をさせて頂いた折に、小泉さんは「郵政民営化と財政再建は関係ない」と断言しました。ビックリです。
「郵政民営化が改革の本丸」のはずでしたから、つまり、財政再建は改革の本丸ではないことになります。だから納得です。
でも、「郵政民営化で小さな政府を実現する」とも言っていました。財政再建に取り組まなければ「小さな政府」は実現できないはずですが・・・。国債発行額が増え続ける一方で、増税によって国民負担率を高める。これでは「大きな政府」まっしぐらです。
しかし、日本の国民負担率は米国に次ぐ低さですので、きっと今は「小さな政府」という認識かもしれません。・・・あれ、でも、「大きな政府」だから、それを小さくするはずでしたが・・・。
いやいや、それについても13日の委員会でスゴイことをおっしゃっていました。「このままでは大きな政府になるので、もっと小さな政府にする。税金のできる限り少ない国にする」とのことでした。でも定率減税廃止と消費税率引き上げですよね。まあ、よく分かりませんが、この際、小泉さんにお任せします。
景気回復の基準が変わったので、きっと経済理論も変わったのだと思います。何しろ、竹中さんがついていますから。
誤字ではありません。僕の世代には懐かしい言葉です。「もとい」とは「元に戻す」という意味の言葉。姿勢を正したり、言い間違いを直す際に使います。
前段は少々投げやりになりました。「もとい」です。ここで投げやりになる訳にはいきません。経済政策の問題を解決するために、論争を続けていかなくてはなりません。それが仕事です。
ここ数年の「政府の定義による景気回復」の要因はふたつ。ひとつは、中国、米国の景気回復の影響。もうひとつは、その間の超拡大的なマクロ経済政策(財政政策と金融政策)の影響です。
財政面では、国債発行残高の激増がその証(あかし)。金融政策は、超のうえに超がいくつもつく金融緩和です。都市部の地価や株価はバブル状態だとも言われています。世界的な原油高の一因は日本の超金融緩和との指摘も聞こえてきます。そういうマクロ経済政策によって、かろうじて名目GDPの横ばい状態を維持してきたとも言えます。
金融政策は国債の発行環境を整えるために行われてきた面もあります。その証拠に、橋本政権時に2.5%程度だった長期金利は、今は1.5%。その間に国債発行残高は約400兆円増えています。経済の常識から言えば長期金利は上昇するはずですが、実際は低下。それを支えてきたのが超金融緩和政策です。
しかし、そうした状況もそろそろ限界ではないでしょうか。このような超低金利では、年金生活者は預貯金等の利息をほとんどもらえません。わずかな資金を株価で運用し、今は含み益が出ていても、下落してしまえば元も子もありません。中国、米国の景気も踊り場から下降局面に入るとも言われています。
こういう状態の中で、小泉さんはどのような経済運営を考えているのでしょうか。引き続き、真剣に論争を挑んでいきます。
(了)