参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです
4月7日、小沢一郎新代表が誕生しました。心機一転、有意義な国会論戦を行うために、職務に精励したいと思います。今回は前々号(Vol.116)の続編をお送りします(Vol.116はホームページのバックナンバーをご覧ください)。
3月21日、中露首脳会談が行われ、両国が戦略的パートナーシップを強化することを謳った共同声明を発表。中国・胡錦濤主席は「両国が戦略的パートナーシップを締結して10年目。両国関係は一層発展する」と発言しました。
ロシア・プーチン大統領も「両国関係は極めて高いレベルに達した」と述べ、今後は宇宙開発でも協力していくことを表明しました。
この展開、Vol.116でお伝えしましたインド、パキスタン、イランの核開発を巡る動きと密接に関係しています。共同声明の中でも、国連安保理事会で協議が始まったイランの核開発問題を、平和的外交交渉によって解決することを盛り込んでいます。一方、米国はイランに対する経済制裁を主張しています。
その2日後の3月23日、米国首脳は訪米中の台湾・馬英九国民党主席(台北市長)と異例の長時間会談を行いました。そして、翌24日、4月20日に予定されている中国・胡錦濤主席の訪米を中国側が主張している「国賓」待遇ではなく、1ランク低い「公式訪問」とすることを発表しました。
2週間後の4月7日、米国のメディアは、イランの核開発施設を米国が空爆する可能性が高いと報道しました。しかも、米国自身が戦術核兵器の使用を含む攻撃を想定しているとの内容です。驚きです。
4日後の4月11日、イランのアフマディネジャド大統領が、ウラン濃縮に成功し「核技術保有国」となったことを発表。すかさず、中国の国連大使が「イランに対する経済的、軍事的制裁は逆効果」との声明を出し、ロシアもこれに同調しました。Vol.116以降の米中露の動きは、まさしく緊張のかけ引きです。
さて、来週18日、胡錦濤主席が「公式訪問」として訪米し、20日、ブッシュ大統領との米中首脳会談に臨みます。イランの核開発問題を巡る双方の次の一手が注目されます。
外交・防衛の動きの背景には、必ず経済問題があります。経済問題を自国に有利に展開させるために、外交・防衛政策があると考えるべきでしょう。外交・防衛問題を経済問題と連動させて解析することが必要です。
今回の場合、気になるのは米国の景気動向です。現在の米国景気は2001年12月から始まった拡大期が続いており、既に50か月を超えています。
米国景気は1回の回復局面がかなり長いという特徴があります。過去2回の回復局面をみると、1982年12月から始まった景気拡大期は92ヶ月、1991年4月からの景気拡大期は120ヶ月続きました。そして、現在の景気拡大期は、上記のとおり、2001年12月から始まっています。
金利は上昇局面にあり、もうそろそろ減速期に入るという予測も聞こえてきます。但し、米国景気は拡大期が長いだけでなく、減速期も短いのが特徴です。過去4回の減速期は、8ヶ月、8ヶ月、16ヶ月、6ヶ月です。一端減速期に入ると1年から3年続く日本からみると、羨ましい経済構造です。
ところで、米国景気にはもうひとつ気になる特徴があります。単なる偶然かもしれませんが、ちょっと気になります。
前々回の回復期はアフガニスタン紛争、前回は湾岸戦争に伴う軍事特需と関連性があります。今回は、9.11テロ後のイラク戦争が契機になりました。もっと遡ると、前々々回は第4次中東戦争が特需につながりました。
こういう因果関係は単なる偶然かもしれません。しかし、仮に現在の景気拡大期が終わった場合、減速期を短期間で脱するために、次はどこで紛争が起きるのだろうかと想像するのは考えすぎでしょうか。
いずれにしても、紛争が起きるためには、紛争の原因があることが前提です。そういう観点からは、イランをはじめとする中東地域と、北朝鮮問題で揺れる東アジアの動向が心配になります。
原因さえなければ紛争に巻き込まれることはありません。国民の生命と財産の安全を守るためには、紛争の火種を未然に消しておくことが必要です。少なくとも、わざわざ火種を大きくすることは避けるのが一国の指導者の知恵というものでしょう。
そもそも、イランは1960年代から核開発を開始しました。当初は、親米派のパーレビ国王に対して、米国や西ドイツ(当時)が技術を提供していました。
1979年のイラン革命でパーレビ国王が失脚し、米ソ冷戦が終結すると、米国に代わってソ連(当時)、その後のロシア、そして中国が技術協力をしてきました。その延長線上に現在があります。
そういえば、イラクのフセイン政権に核開発技術を提供していたのも当初は米国でした。その後はやはり、ロシアと中国です。北朝鮮を経由した動きもありました。
繰り返しになりますが、外交・防衛の動きの背景には必ず経済問題があります。それは米国も中国もロシアも例外ではありません。
核開発を巡る問題を抱えているイラン、インド、パキスタン、北朝鮮。そして、大国の米中露。これらの国々の経済権益と外交戦略を的確、適切に解析、理解し、日本が不測の不利益を被らないように対応すること、日本国民の生命と財産を危機に晒さないように対応することが、日本の政府の役割です。当然のことです。
外交・防衛問題への対応には絶対的な解答はありません。実験もできません。しかし、一国の指導者は十二分に全体の状況を熟慮し、可能な範囲で国民に状況を説明する責任があります。
今後の国会でも、そういう観点から深い議論に努めたいと思いますが、小泉首相が真摯に質疑に応じてくれることを期待したいものです。
(了)