政治経済レポート:OKマガジン(Vol.119)2006.4.27


参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです


昨日(4月26日)から行革推進法案の参議院での審議が始まりました。行革は日本の活力を高めるために不可欠の政策課題。委員会の理事として職責を果たしていきたいと思います。今回はこれから審議される行革推進法について解説させて頂きます。

1.3つの法案

国会で審議される法案の内容や仕組みを多くの国民の皆さんにお伝えすることは至難の業です。本来はマスコミの役割でもありますが、メディアは「報道」よりも「娯楽」にウェイトを置いており、なかなか難しいのが実情です。

さて、今回の審議は3つの法案が対象になります。ひとつは行革推進法案。財政赤字を減らして小さな政府を目指します。

もうひとつは公益法人(財団法人、社団法人)制度改革法案。この法案は3つの法律から構成されています。無駄な公益法人を作らないことを目標とします。

さらにもうひとつは、俗に言う市場化テスト法案。これまで役所がやっていた事業を民間に開放することを目的としており、正確には官民競争導入による公共サービス改革法案と言います。

いずれも表面的にはもっともな法案です。このうち、最初の行政改革推進法案の中身は大きく5つにテーマが分かれます。

第1は政策金融。現在8つある政策金融機関をひとつに編成し直します。中小・零細企業の皆さんには直接的な影響が出ます。行政組織が少なくなることは良いことですが、何千億円単位の国際協力銀行の業務と、何百万円単位の国民金融公庫などの業務を一元化できるか否か心配です。ホールディングカンパニーの下で分社化されれば同じことです。

第2は公務員総人件費の抑制。5年で5%削減が目標ですが、公益法人が対象となっていないのが難点です。

第3は特別会計。現在31ある特別会計の数を減らし、20兆円の財政健全化を行うそうです。逆説的に言えば、これまで毎年20兆円は不要不急の支出を行っていたことを認めたのも同然。なるほど、800兆円もの国の借金が溜まるはずです。過去の責任を問わない内容となっているのは納得がいきません。

第4は資産売却。無駄な資産を売却するのは結構なことですが、ここでも、それを作って財政赤字を累積してきた責任には触れていません。

第5は独立行政法人。組織・業務を見直すと言っていますが、そもそも特殊法人を見直したのが独立行政法人。結局、その見直しが形骸的であったことを証明しています。

気になる点は多々あるものの、志は良し。問題は中身です。

2.公益法人と官益法人

3つの法案はいずれも重要ですが、公益法人改革にはとりわけ注目しています。公益法人制度が明治29年に民法で定められてから実に110年振りの見直しです。

現在の公益法人は所管官庁や都道府県の一存で設立が可能。補助金や税の優遇が受けられ、高級官僚の天下りの温床になっています。

新制度では登記のみで財団法人、社団法人が設立可能となる一方、税制優遇を受けるためには、新設される第三者機関(公益認定等委員会)に公益性の認定を申請しなくてはなりません。

一見合理的な改革のような気がしますが、重要な問題がいくつもあります。例えば、公益認定の当たる第三者機関に決定権はなく、勧告するだけです。結局は関係省庁の影響力が温存されそうです。

公益の定義も23種類が明記されていますが、いずれも曖昧。とくに23番目の定義は「政令で定める公益事業」。つまり、何でもありです。また、法案の詳細は約200に上る政省令に委ねられ、相変わらず国会では実質的な内容が審議できない状態です。

財務省は税制優遇に後ろ向きです。結局、本当に民間ベースで運営される公益法人の公益性を否認して税制優遇を取り止める一方、天下り先公益法人には税制優遇が認められる結果となることが懸念されています。これでは、公益法人ならぬ官益法人です。

3.試金石

いずれにしても、今後の展開をみてみないと改革の本気度と実効性は分かりません。いくつかの試金石を見届けなくてはなりません。

1例だけご紹介しておきましょう。例えば、システム関係のある財団法人。政府提出の資料によれば、ここには、かつての運輸、建設、自治、農水、文部の5省の事務次官OB、及び通産省局長OBの合計6人が非常勤理事に就任しています。因みに、通産省局長OBは1971年からこの財団法人に在籍。実に35年、スゴイですね。

さて、この財団法人には、毎年、霞ヶ関から調査研究事務がたくさん委託されています。例えば、文科省(旧文部省)。いくつも委託していますが、ひとつのテーマは「子どもの意欲ややる気に関する調査研究」。う~ん、システムとは関係ないような気がします。

国交省(旧運輸省・建設省)からもたくさん委託されています。例えば、「環境に優しい雪国のあり方に関する調査研究」だそうです。これもシステムとは関係ないような気がします・・・。

総務省(旧自治省)も同様ですが、「地域づくりキーワードブック作成のための実態調査」がテーマのひとつだそうです。これも関係なさそうです。

これ以上列挙するとストレスが溜まりそうですので、あとはご想像にお任せしますが、これらの調査研究委託費は判明しただけで毎年4億円近くに上っています。しかも、調査研究は外部に再委託されていますが、再委託を受けた先からは「中身は全く別物のレポートに表紙だけをつけて提出している。コストゼロの仕事。したがって、再委託費もごくわずか」との証言が得られています。・・・ということは、差額の何億円もの資金が財団法人に差益として残ります。

この財団法人の年間収入は33億円ですが、残りの29億円も推して知るべしというところでしょうか。年収が33億円のこの財団法人、国民にとっては散々(33)な話、実にヒドイ話です。

今回の行革推進法案では、現在ある公益法人(約2万5千)は2008年度にひとまず全て非営利法人となり、2013年度までの移行期間中に新設第三者機関に公益性の認定審査を申請し、認定されれば税制優遇を受けることになります。

この財団法人の動向をシッカリと見守りたいと思いますが、そもそも、「行革」というからには、このような財団法人は即刻解散、過去に投入された国費・公費(=税金)は関係者から返還させるのが筋でしょう。そうした対応ができないようなら、行革推進法案の名が聞いて呆れます。

ゴールデンウィーク明けの委員会審議でシッカリと内容を質したいと思います。

(了)


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