政治経済レポート:OKマガジン(Vol.132)2006.11.15


参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです


12月1日(金)に名古屋で開催します「講演会」+「激励会」のご案内をさせて頂きます。「講演会」では、「2007年、日本経済の行方。株価・為替・金利はどうなる」というテーマで私自身がご説明をさせて頂きます。「激励会」には小沢一郎代表もご来場の予定です。詳細はホームページのバナーからご覧ください(ホームページからお申し込みもできます)。ご協力、ご参会を賜れば幸いです。

1.ダブルスタンダード

6か国協議再開に向けて関係国の事前調整が始まっています。北朝鮮は6か国協議への日本の参加を拒否したり、協議再開には金融制裁問題解除が前提というハードルを一方的に設定。他の5か国は協議再開実現のために金融制裁問題を取り上げることで譲歩しましたが、北朝鮮国内では「金融制裁問題が議題になったことは北朝鮮の勝利」と報道しています。外交はまさしくカードゲームです。

北朝鮮のいつもながらの姿勢には困ったものですが、条件交渉のハードルを高くして自らのカードの価値を高めるのは外交の常道。ある意味でセオリーどおりの理に適った行動です。現に、その結果として金融制裁問題を議題化することに成功しました。

理に適っていると言えば、自分たちだけが非難されるのは不合理とする北朝鮮の主張も一理あります。

もちろん北朝鮮の核実験にも、核拡散にも反対です。しかし、米国が10,104発の核弾頭を保有し、既に1,030回もの核実験を行っていることも事実。さらには、米国が核拡散防止条約(NPT)体制の強化を主張しながら、包括的核実験禁止条約 (CTBT) の禁止対象外であるとして臨界前核実験を繰り返していることにも留意が必要です。

米国以外の核保有国は7か国。ロシア、中国、フランス、英国、イスラエル、パキスタン、インド。このうち、露中仏英の4か国はNPTの加盟国。これら4か国に米国も含めた5か国は、なぜNPTに加盟していながら核保有国なのでしょうか。

1970年に発効したNPT。発効時に核保有国は米露中仏英の5か国に限定すると決めたことから、これら5か国はNPTに加盟していながら核保有が許されています。

「それが正しいのは、それを正しいと決めたからである」というレトリックと同様であり、唐突な喩えですが、何だか一休さんのトンチのようです。

残りの189か国のNPT加盟国は核保有が禁じられています。したがって、イスラエル、パキスタン、インドはNPT非加盟国。北朝鮮は2003年にNPTから脱退しました。

上述のCTBTも1996年に国連総会で批准されながら、核開発技術を有する44か国の署名、批准が揃わず、未発効状態が続いています。

北朝鮮に厳しい姿勢で臨むことは当然です。しかし、核問題にダブルスタンダードが存在していることも否定できません。

2.グレーゾーン

ダブルスタンダードと言えば高校の履修単位不足問題。問題の根源は、文科省の学習指導要領が求める学力と、大学受験の際に求められる学力の相違。言わば学力のダブルスタンダードであり、「2つの学力」の放置が混乱を生み出しました。

混乱の被害者である生徒に補習を課して事態を収拾しようとする対応には違和感を覚えます。正規履修の生徒、履修不足の生徒の双方に不利益をもたらさない善後策を提示したうえで、文科省関係者が責任をとるのが本来の対応です。

一応授業はやったものの、受験勉強に配慮して授業時間数を規定どおりに行わなかった先もあるようです。言わば、グレーゾーンです。今回の補習時間がグレーゾーン校の授業時間数よりも多ければ、受験間際に補習を課される生徒はたまりません。

グレーゾーンと言えば灰色金利。ダブルスタンダードの真骨頂です。政府が先月31日に国会に提出した貸金業制度改革関連法案では、制度変更から3年後を目途に出資法の上限金利(29.2%)を利息制限法の上限金利(20%)に引き下げることになり、ダブルスタンダード是正の方向に踏み出したことは評価できます。

しかし、3年後を目途というのは遅すぎるとの印象を拭えず、金融庁のヤル気のほどが疑われます。

灰色金利問題の背景には大手銀行のビジネスモデルが影響しています。個人ローン等に積極的には応じない一方で、消費者金融業者に高利で融資。消費者金融業者が灰色金利で儲けた収益から上前をはねるというビジネスモデルです。

灰色金利問題を真剣に解決するためには、こうしたビジネスモデルを見直す必要があります。

いずれにしても、原因そのものを是正しない限り、形を変えたダブルスタンダード問題やグレーゾーン現象が発生します。例えば、上限金利を下げる一方で法外な手数料を取って実質金利を高めれば結果は同じこと。そもそも、3年間は放置するという金融庁の姿勢自体が本音と建前のダブルスタンダードです。

3.ギャップ

今年の7月から9月(第3四半期)の国内総生産(GDP)の速報が公表されました。年率2.0%の伸びで7四半期連続のプラス成長。2002年2月に始まった景気拡大期は11月で4年10か月目に入り、戦後最長の「いざなぎ景気」を抜くことがほぼ確実。何だか明るい話です。

一方、個人消費は前期比0.7%減。2004年10月から12月(第4四半期)以来の2年ぶりの落ち込みです。設備投資の伸びも鈍化しました。また、名目成長が実質成長を下回る「名実逆転」は10四半期連続。必ずしも明るくない話です。

景気の評価は切り口によってギャップがあるようです。景気は良いという声も聞く一方、そんな実感はないという話もたくさん聞きます。企業間でも景気の印象にかなりギャップがあるようです。

企業間で景況感にギャップがあるのは、いつの時代でも同じかもしれません。しかし、今回は少々ギャップが激しいようです。

そもそも「景気拡大期は戦後最長」という表現が景況感をミスリードしています。このところの成長率はせいぜい年率2%程度。景気拡大という表現は厳密には間違いではありませんが、高度成長期のような印象を与える語感が違和感を高めています。

僕の記憶が正しければ、1990年代半ばまでは年率3%程度を下回ると不景気と表現していたはずです。その後、竹中大臣が在任中に「潜在成長率より高ければ好景気」と述べたことも記憶しています。そうであるならば、潜在成長率が0%ならば年率1%でも好景気になります。

潜在成長率次第というのは、景気判断の基準が変動するということです。これでは、景気判断のダブルスタンダードというよりも、基準がないに等しいとも言えます。ほとんどの国民が好景気または不景気と思っているわけではない以上、今の景気はグレーゾーンという表現の方がフィットするかもしれません。

ダブルスタンダード、グレーゾーン、ギャップ。政策制度の説明の仕方や報道の内容によって、黒いものも白く、白いものも黒く見せることができます。少なくとも、意図的に国民をミスリードすることのない国の舵取りが求められます。

(了)


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