政治経済レポート:OKマガジン(Vol.183)2009.1.5


明けましておめでとうございます。このメルマガも足かけ9年目に入りました。引き続きご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。さて、171通常国会がさっそくスタート。日本にとって、政治経済や社会構造、国際社会における立場や役割、いずれも重大な転換期を迎えています。日本が的確に舵を切って誤りなき進路を選択できるように、政治家のひとりとして全力で職責を果たします。今年もよろしくお願い申し上げます。


1.新しい秩序

2009年が幕を開けました。世界も日本も、政治も経済も、「新しい秩序」を模索する1年となるでしょう。

今年の干支は「己丑(つちのとうし)」。「混沌としたものから秩序をつくる」という含意のようです。

「丑」は「紐(ひも)」のつくり(右側)に当たり、「混沌」を表現。グチャグチャっとした感じです。

一方、「己」は「起」「改」など「秩序をつくる」ことを想起させる漢字につながります。もちろん、自「己」主張が必要ですから、日本としての戦略、政府が目指す目標が明確になっていることが前提です。

昨年の干支は「戊子(つちのえね)」。「新しいことを始める」という含意です。「新しいこと」を始めるには「古いこと」が終わらなくては始まりません。

昨年9月15日のリーマンショック以降の世界の政治経済の動きは、米国中心の金融資本主義、米国一極集中の覇権構造、その結果としてのドル基軸通貨体制という「古いこと」が終わりを告げる出来事だったかもしれません。

そして、その後の「混沌」とした状況から「新しい秩序」を生み出すのが今年の役回りのようです。

2.十干十二支

干支は十干十二支(じっかんじゅうにし)で構成されますので、「十」と「十二」の最小公倍数の「六十」でひと回り。六十歳になると自分が生まれた年の干支に戻るので「還暦」と言います。

ちなみに、十干は「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」、十二支は「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」です。

前回の「己丑」は1949年。東西ドイツ、中国が建国され、北大西洋条約機構(NATO)が誕生。第2次大戦後の世界の枠組みが決まりました。

日本では戦後初めて、東京、大阪、名古屋の証券取引所が再開。1ドル360円の為替レートが定まり、輸出立国による日本経済の再建が始まりました。

前々回の「己丑」は1889年。憲法が公布され、近代日本の建国が本格的に始まった年です。

ところで、干支は「甲子」がスタート。現在は1984年の「甲子」から始まった60年循環の中にあります。ちなみに、その60年前、1924年の「甲子」の年に建設されたのが甲子園球場です。

さて、1984年と言えば、輸出から内需主導の構造転換を提唱した「前川リポート」が公表された年。この四半世紀、つまり過去25年間、「前川リポート」の宿題に的確に取り組んでこなかったことが現在の日本の低迷の一因です。

今回の「己丑」は、内需主導型経済への構造転換のために、政治経済が「新しい秩序」を生み出す年としなければなりません。

3.コンドラチェフの波

経済学では、景気循環はいくつかの「波」によって形成されると言われています。いずれも発見した学者の名前に由来します。

第1は「キチンの波」。約40ヶ月の短いサイクルであり、企業の在庫投資に起因します。第2は約10年サイクルの「ジュグラーの波」。設備投資が主因です。

第3は「クズネッツの波」。約20年のサイクルであり、住宅や社会インフラの建設の増減によって生じます。人口構造の変化に影響され、世代間循環とも言われます。

第4は技術革新や産業構造の変化に影響される「コンドラチェフの波」。約50年の長期サイクルです。

「コンドラチェフの波」の実証分析結果には諸説ありますが、比較的多いのは、第1波が産業革命に伴う紡績業の発展、第2波は蒸気機関実用化による鉄道建設、第3波は自動車の普及という整理です。

1990年代のIT革命が第4波という指摘も聞かれますが、まだ通説として定まっている訳ではありません。

「コンドラチェフの波」のサイクルは干支の一循環(60年)に近いことから、あえて前回の「己丑」を基点と考えると1949年。とすれば、やはり20世紀後半は何と言っても自動車が中心でした。

内需主導型経済への構造転換を果たすためには、国民の購買力を高めることが必要です。購買力を高めるためには「稼げる産業」が勃興しなければなりません。

一時は金融業が「稼げる産業」ではないかという期待が高まりましたが、「百年の一度の危機」は「実業なき虚業(金融業)は幻」であることを示唆しています。

では「稼げる産業」とは何か。答えはふたつ。ひとつは国際社会において日本が比較優位に立つ産業。もうひとつは、「コンドラチェフの波」の第4波を主導する産業、またはそれと関連する産業です。

その解答を導き、そうした産業を育成し、国の進路を選択するのが政府の役割。そのことを改めて肝に銘じて熟考するとともに、国会論戦に臨みたいと思います。

(了)


戻る