小沢代表を巡る問題で、国民の皆様、支持者の皆様にご心配、ご迷惑をおかけしています。党所属議員のひとりとしてお詫び申し上げます。しかし、日本にとって、政権交代による国のあり方や政策の抜本的見直しが必要だという信念には些かも揺らぎはありません。政権交代の大義をご理解、ご支持頂けるように、粛々と職責を果たして参ります。
先月末のテレビ番組で、石破茂農水大臣が「過去15年間、農業産出額が減少し続け、農業所得は半分になった。農業政策に間違いがあったと言わざるを得ない」「農業政策は、水田を守るのではなく、票田を守ってきた」と発言。正論を堂々と述べた石破大臣に敬意を表します。
戦後、日本は150万haの農地を造成する一方、250万haの農地が減反、転用、耕作放棄で消失。多額の農業予算(税金)を農業そのものではなく農業土木工事に投入し、食糧自給率は低下。二重の失敗を犯してきました。
減反に代表される米価維持政策が、高値を嫌気した消費者の米離れを加速した面もあります。米主業農家の所得は増えず、農業離れ、兼業化、耕作放棄も誘発しました。
その「負の連鎖」に一役買ったのが日本独特の「総合」農協という仕組み。農協が悪いでのはなく、「総合」農協という仕組みの問題です。
農家と農村の全てを面倒みる「総合」農協。高い肥料を提供して生産コストと米価が上昇、安い輸入米に対抗して高関税、生産調整のために減反、でも農家の所得増にはならず「負の連鎖」は止まりません。
ところが、高い生産コストは米価に反映されて「農協、農水省、自民党はよくやっている」という誤解と認識が定着。高い米代金が政府から振り込まれて「総合」農協の預金も増加しました。
農協から預金が集まる農中は、預金利息と農協支援のための収益獲得が至上命題。高い価格に支えられた肥料産業等への融資で収益を上げるとともに、ここ数年は投資銀行になったと錯覚して証券運用に傾注。昨秋以降、農中の運用失敗は国民の知るところとなりました。
農業政策も農協も農中も、農業を発展させることが本来の目的。「米肥」農協と揶揄され、農家と農業を疲弊させ、金融業務が生命維持装置になっている「総合」農協制度は見直しが急務です。
農業が大事だということに反対する人はいないでしょう。同時に、今の日本の農業が疲弊していることも認めざるを得ません。そうであれば、今までの農政のどこに問題があったのかを虚心坦懐に認識し、それを改善していくことが求められます。
「百年に一度の危機」を映じて昨年後半は穀物価格も若干反落しましたが、依然として最高値圏で推移しています。
過去数10年間、1ブッシェル(27.2Kg)3ドル前後で安定していた小麦は、昨年15ドル近くに高騰。大豆は34年振りに最高値を更新し、トウモロコシもここ数年で3倍になりました。
人口大国の中国・インド両国が経済成長期に入り、国民1人当たりの穀物消費量が急増していることなどが影響しています。今や、穀物は「食料」から「資源」に転化しました。
中国・インド両国の人口は24億人。先進国のように経済成長が減速し、定常状態になるのはまだまだ先です。消費量増加は20年以上続くことが予想されます。
今後、穀物をはじめとする食料を巡って国家間の争奪戦が展開されるほか、エネルギー需要との競合もあって、食料は慢性的な供給不足と価格高騰に直面するでしょう。
毎年3000万トンの穀物を輸入する一方で「資源」である米を減産する愚行を続けている日本の農政。減反によって水田面積約250万ヘクタールの4割、100万ヘクタールが消失しました。
水田の生産力は1ヘクタール当たり5トン強ですから、500万トン以上を減産していることになります。減反をはじめとした農政の失敗によって、食料自給率(カロリーベース)は4割を下回りました。
さらに、耕作放棄地が約40万ヘクタール。ひとつの県に相当する面積です。商業地等への転用でも農地は減少しています。
そうした中で、今国会に農地貸借を原則自由化する農地法改正案が提出されました。農地の「所有から利用」への転換を図り、株式会社や農協による借用も解禁。自ら作物をつくる「自作農主義」を原則とする戦後農政の転換を企図。もっとも、農地法改正の一方で減反を続けるようでは支離滅裂です。
日本の米需要は1963年の1341万トンをピークに減少。現在はわずか900万トンです。米需要掘り起こしのためには低価格化(コスト削減対策)等の政策対応が急務です。
また、農水省が2005年に策定した「経営所得安定対策等大綱」では、2015年に食料自給率を45%に引き上げることを目標としています。しかし、今のままでは実現は不可能でしょう。
米需要を掘り起こし、食料自給率を改善するためには、従来の農政の構造的問題点の是正が不可避ですが、そのためには新しい動きを活用する必要があります。
そのひとつが飼料米。穀物価格高騰に伴う飼料コスト高に苦しむ畜産農家がトウモロコシ等の補完穀物として飼料米に注目しています。
休耕地で飼料米を生産すれば、米作農家と畜産農家の双方が助かります。飼料米生産の採算がとれるようにすること、そのために飼料米を活用した配合飼料市場を充実させることが必要です。
もうひとつはエコフィード(食物残さ)。食品製造過程で発生する穀物や野菜の「残さ」を有効活用することは、食料自給率向上に間接的に寄与します。
エコフィードを飼料に活用すれば飼料の低価格化につながり、畜産農家も助かります。言わば、日本の農業を循環型に転換し、低コスト化を実現する試みです。
日本の食文化には様々な「先人の知恵」があります。例えば「かき揚げ」。永平寺の庫裏(くり)が、食材をムダにしないように野菜の切れ端を集めて揚げたのが始まりと言われています。まさしくエコフィードです。
農地法を改正しても、減反、輸入依存、非循環型、土木工事中心の農政の構造を放置したままでは、何の問題解決にもなりません。
また、農村や中山間地は日本の原風景。環境問題に直面する現代においては、その観点からも維持・保全が必要な地域です。農業の国際競争力を高めることと共生できる農政を目指さなくてはなりません。
大規模化を図る農地と、食料自給率向上、日本の原風景維持、環境保全等のために政策的に維持する小規模農地を峻別し、それぞれに適した政策制度を運営すべきです。
株式会社参入は前者、戸別所得補償は後者向きの政策です。系統金融機関も本来の目的に資する業務に特化すべきでしょう。
石破大臣には「負の連鎖」を断ち切り、農政の間違いを正すことを期待します。
(了)