菅内閣の改造に伴い、内閣府副大臣を退任しました。1年間全力で職務を遂行し、職責を果たしました。内閣府、金融庁をはじめ、一緒に頑張って頂いた関係者の皆さん、ご支援頂いた地元の皆さんに感謝申し上げます。次は、党務と議会において職責を果たします。
先週17日、自動車用金型の生産量で国内2位の富士テクニカと同3位の宮津製作所が事業統合を発表しました。
金型は、金属やプラスチック等を部品の形に加工するための枠型。自動車や家電製品等、様々な製品の部品を製作するために不可欠のものです。
日本の金型製作の緻密さ、巧みさは世界に誇る技術であり、言わば日本の「お家芸」。「ものづくり日本」の象徴であり、基礎でもありました。
しかし、この分野でも新興国に急速に追い上げられ、厳しい状況に直面。昨年、国内1位のオギハラがタイ企業の傘下に入りました。
そうした中での今回の富士テクニカ、宮津製作所の事業統合。事業統合しても、なおかつコストダウンのためのリストラが必要であり、両社の経営陣、社員には苦渋の決断だったと思います。しかし、日本の自動車用金型の主力企業存続のためにはやむを得ない対応でしょう。
宮津製作所は富士テクニカへの事業譲渡後、特別清算が行われ、メインバンクの足利銀行が債権放棄。一方、富士テクニカは、企業再生支援機構から出資を受け、経営再建に取り組みます。
ここで登場する企業再生支援機構は、昨年10月に設立された官民出資の株式会社。つまり、政府の支援によって国内金型産業の地盤沈下を食い止めるということです。
企業再生支援機構の経営目的は、有用な経営資源を持ちながら、過大債務のために事業継続が困難となっている中堅・中小企業等を支援、再生すること。
2008年2月、設立根拠法案が国会に提出されたものの、支援対象として無駄遣いの温床である第3セクターを想定していたことから、当時野党であった民主党の指摘を受けて、企業再生を中心とした組織に軌道修正。昨年6月に法案が可決されました。
支援枠は総額3兆円。設立から2年以内に支援先を決定。支援決定から3年以内の支援完了を目指しています。
国家資本主義の中国を筆頭に、インド、韓国、台湾、ASEAN諸国等の新興国との競争を勝ち抜くには、官民一体の取組が必要です。
企業再生支援機構とともに、先端企業への出資を目的とする産業革新機構(昨年7月設立)も含め、これらを有効活用した日本企業再生の正念場を迎えています。
中国、インド、韓国、台湾、ASEAN諸国等の新興国との厳しい競争下にある「ものづくり日本」。コストの低さでは太刀打ちできない日本の対抗策のポイントは2点。
ひとつは、技術力の先行。マザー技術やマザーマシンといった核心分野の優位性を維持することです。
もうひとつは、新興国の中間層以上の需要獲得。日本メーカーが価格20万円のインドのタタ車に応戦することは不可能です。
一方、中間層以上の需要に対応した製品は、自動車であれば高級車やEV(電気自動車)等の環境対応車。潜在需要は大きく「ものづくり日本」の戦略分野です。
しかし、その戦略も中国に足元を脅かされています。日本は政官財とも動きが遅すぎます。
経済協力開発機構(OECD)によると、中国の研究開発従事者は2008年時点で約160万人。5年前の1.8倍であり、米国を抜いて世界一になりました。
また、中国政府主導によるEV開発も本格化。
トヨタと合弁事業も営む国有第一汽車集団、同じく国有で独フォルクスワーゲンと事業提携する上海汽車集団、米フォードから高級車ブランド(ボルボ)を買収した浙江吉利控股集団、米国人投資家バフェット氏も出資して独ダイムラーと共同開発する比亜迪汽車、日産の合弁相手である東風汽車集団、マツダ、スズキが組む長安汽車集団など、大手10社の環境対応車への開発投資は今後数年間で800億元(約1兆円)に達し、年間生産可能台数も100万台規模になる見込みです。
中国政府は購入補助金を支給して販売支援を行うとともに、2015年までに量産体制を整えて全国販売を企図。輸出も念頭にあるようです。
さらに、中国政府は「EV基幹部品生産の合弁事業は中国側51%以上出資が条件」と定め、事業提携先の日米欧メーカーからの技術移転を狙っています。
中国国内で生産されるEV基幹部品は電池、モーター、制御システムの3つ。中国政府は事業提携先にこれらの技術情報開示を求めています。
中国の中間層需要獲得を図る日米欧、技術移転を迫る中国。競争相手ながら中国の戦略的対応は見事。もはや日本には、中国に対するチャレンジャー精神が必要です。
政府・日銀が6年半振りに為替介入に踏み切りました。批判的な姿勢を示している欧米自身も、自国通貨安、輸出主導の景気回復を指向。言わば近隣窮乏化政策合戦の様相を呈する中、日本だけが座して我慢しているわけにはいきません。
一方、人民元切り上げを欧米から要求されている中国。政府報道官が「為替水準の調整はどこの国でも必要」として、暗に日本の介入を容認。
尖閣列島での中国漁船と海保巡視船の接触事件で日中間の緊張が高まる中、奇妙な理解を示しています。外交とは、かくも変幻自在なものであることを日本は改めて認識すべきです。
中国、インド、韓国、台湾、ASEAN諸国等の新興国との厳しい競争に直面している日本。日本経済包囲網を崩すためには、米ドルを対象にした介入だけでは効果が限定的です。
とくに留意すべきは韓国ウォン。1997年のアジア通貨危機の際、ウォンは円に対して大幅に下落。その後、2000年代は総じて横ばいで推移し、リーマンショックを契機とした金融危機によってさらに下落。
韓国現代自動車の今年4~6月期の純利益は金融危機前の2.5倍。トヨタを含む国内3社は依然として1割以上の減益。ウォン安を反映した対照的な動きです。現代自動車は、利益増加に伴って技術開発にも資金を投下。競争力強化に余念がありません。
この間、韓国の外貨準備高は今年6月末で2742億ドル(約24兆円)と金融危機前から1割増。通貨当局はウォン安維持のための介入を行っているようです。
その結果、ウォンはアジア通貨危機、金融危機直前と比較して、いずれも対円で約5割の下落となっています。
ウォンだけではありません。台湾ドルも、アジア通貨危機、金融危機直前と比較して、それぞれ対円で4割安、3割安となっています。
日本の輸出企業の競争相手は、今や韓国、台湾などのアジア企業。日本の輸出企業が円高に悲鳴をあげる理由は、ドル安もさることながら、アジア通貨安です。
韓国ウォン、台湾ドルに対して介入することは困難ですが、韓国ウォン建て、台湾ドル建ての債権や資産を購入するといった対策は可能かもしれません。アジア通貨安対策が急務です。
(了)