政治経済レポート:OKマガジン(Vol.291)2013.7.17


選挙戦もあと3日。ご支援のほど、よろしくお願いします。2期目の活動記録であるダイジェスト・ムービー「Advance Flag(アドバンス・フラッグ)」をホームページとYouTubeにアップしました。予告編(45秒)に続いて本編(約8分)をストリーム。URLはhttp://youtu.be/xCCFd-slqHkです。多くの方にご覧いただけるよう、ご友人・お知り合いにご案内いただければ幸いです。

選挙期間中ですので突貫作業でメルマガを書き下ろしました。誤字脱字等のチェックが不十分かもしれません。あしからずご了承ください。


1.国内回帰

選挙戦も14日が経過。その間に多くの中小企業経営者にお会いし、有益なお話をたくさん聞かせていただいています。何とか選挙を切り抜け、今後の国会論戦や政策に活かしたいと思います。

円安の企業業績へのプラスの影響は主に次の2ルートでもたらされています。

ひとつは、円安で輸出価格が下がり、価格競争力が向上。現在まだ国内で生産している部品や製品の輸出が増えること。

もうひとつは、ドル建て収益の円換算収益が増加すること。もっとも、Jカーブ効果によって、貿易収支に反映されるにはタイムラグがあります。

Jカーブ効果とは、円安によって日本からの輸出価格が低下し、短期的には貿易収支が悪化。やがて、輸出数量が伸びて貿易黒字が好転。このプロセスがアルファベットの「J」のようなカーブを描くために、Jカーブ効果と呼ばれます。

いずれにしても、貿易収支に好影響が顕現化することを期待しますが、その一方、多くの輸出関連の中小企業経営者が異口同音に次のように指摘します。

曰く「円安になっても、生産拠点は日本には戻らない」。

その理由は主に次の2点。第1は、既に海外に生産拠点を移した以上、一過性の円安では国内回帰は困難ということ。

たしかに一過性の円安では困難。「では、どのぐらいの期間、どのぐらいの水準(円安)が続いたら国内回帰すると思いますか」と質問すると、第2の理由が語られます。

「結局、円安では生産拠点は戻らないということかもしれない。外需向けの製品は消費地で生産する方が合理的。結局、内需が増えない限り、生産拠点の国内回帰は困難だろう」。

つまり第2は、現地(消費地)生産の方が合理的ということ。

さらに「まだ国内生産している製品も、今後要求されるコストダウンに応えられなければ、発注元企業は引き続き中国・東南アジア諸国等での海外生産にシフトすると思う」という指摘が続きます。

この選挙期間中、結局、円安になってもこうした構造自体は何も変わらないという印象を強くしています。

ものづくり日本。それを支える多くの中小企業をどのように支えていくのか。参議院選挙後も国会の重要な論点です。

2.ビスポーク

一方、為替動向に左右されず、威風堂々の中小企業にも遭遇しています。

今日訪問させていただいたコイルメーカーのA社。自動車から家電製品まで、実に多種多様なコイルを供給しています。

しかも、巻線機及び巻線自動システムラインの特許を有し、「市場シェアはどのぐらいですか」と社長に聞くと、サラッと「70%ぐらいかな」とのご回答。恐れ入りました。

もちろん、円安になれば相応の効果はあるものの、「わが社の製品がなければ供給先のメーカーは生産ができない。為替動向は関係ない」との威風堂々振り。

しかも、「わが社は営業を置かない。製品が営業マン」と言い切ります。

曰く「例えば、中国メーカーに良い製品を供給すると、彼らが口コミで『日本のA社はスゴイ製品を作っている』と広めてくれるので、引き合いは勝手に入ってくる」とのこと。「なるほど」と思いつつ、その自信と信念、経営理念には感服しました。

選挙本番前にも、NASA(米航空宇宙局)に重要な部品を提供している機械メーカー、半導体製造装置の洗浄技術で世界を制する電機メーカーなど、多くの優れた中小企業を訪問させていただきました。

選挙運動中ながら、実に勉強になります。いずれも鍵は技術力。当たり前と言えばそれまでですが、そうした企業群やその技術について、政治や行政がもっと正確な情報を収集し、それらをサポートしていくことが急務です。

もっとも、そうした中小企業の経営者が口を揃えて言うのは、「政治や行政に邪魔されたくない」という指摘。

日本の産業政策によほど不信感があるのか、過去にトラウマがあるのでしょう。型にはまった定番の政策を、上意下達、上から目線で行うことでは現場の実情に合わないということのようです。

政治や行政(日本銀行を含む)は、企業や経営者に対して「技術力が大切。これからの日本にはオリジナリティのあるオンリーワン企業が必要」という趣旨のことを言い続けていますが、その指摘は自らに返ってきます。

つまり、世界で活躍している企業群の情報を正確に把握し、そうした企業のニーズや要望に対して「ビスポーク(Bespoke)」な政策を提供する必要があります。

「ビスポーク」は注文生産を意味する「オーダーメイド(Order made)」や「カスタムメイド(Custom made)」と同義語。

これからの日本。企業に「オンリーワン」の技術や製品を求めるならば、政府も「ビスポーク」な政策を提供すべきです。

3.恒産なければ恒心なし

選挙期間中、中小企業経営者のみならず、多くの有権者にお会いしています。

その中で、改めて思い浮かぶのは中国の古典、孟子に登場する政治のあり方を説いた言葉「恒産なければ恒心なし」。孟子が斉(せい)の宣(せん)王に説いた内容です。

すなわち、「国民生活の安定がなければ心の安定はない(恒産なければ恒心なし)。国民に貧しい生活をさせながら、罪を犯したといってこれを罰するのは、罠をしかけ、国民をそこに追いやるようなものである。為政者は、まず国民生活の安定を保障しなくてはならない」。

その具体策として、孟子は周(しゅう)の時代に行われた税制を参考に「井田法(せいでんほう)」を考案。

田を「井」の字形に9つに区切り、中央の1区画を「公田」とし、残りの8区画を「私田」として8戸に配分。「私田」は各戸が自由に耕作。「公田」は8戸が協力して耕し、その収穫を税収に充てるというものです。

自力で活躍するオンリーワン企業の「私田」から多くの税収を求めるよりも、政府が「ビスポーク」な政策でオンリーワン企業をサポート。

多くの企業に蓄積されている技術・製品情報を集約し、日本経済の牽引役となる「公田」的な分野を創造するというイメージが「井田法」から連想できます。

言うは易し、行うは難し。簡単なことではないことは理解しつつ、今後、そうした方向性を追求してみようと思います。

なお、「恒産なくして恒心なし」は「衣食足りて礼節を知る」という言葉に通じています。

さて、選挙戦もあと3日。ご支援のほど、よろしくお願い致します。

(了)


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