米大統領共和党予備選は、スーパーチューズデイもトランプが圧勝。ヘイリーは撤退し、これで「バイデン対トランプ」再戦が確定。メルマガ前号でお伝えした「トランプ・シミュレーション」を真剣に精査し、激震に備える段階に入りました。しかし、日本の政治はご承知のとおりの状況。とても準備を進めるような環境にありません。この間、技術革新の加速度もより増している印象です。このメルマガではロボティクスについて何度も書いていますが、ここにきて新たなスタートアップが注目されています。
先月末、ヒト型ロボットの米新興企業「フィギアAI」がOpen AIやNVIDIAから6.75億ドル(約1千億円)を調達したと発表。ほかにもアマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏や米マイクロソフト等が運営する投資ファンドも同社に出資。同社の企業価値は現時点で約26億ドルと評価されています。
同社はロボットを動かす次世代AIモデルの開発についてもOpen AIと業務提携し、クラウドはマイクロソフトを使用。言語能力を高めたロボットの商業化を目指しています。
同社はボストンダイナミクスやテスラをスピンアウトしたエンジニア等が2022年に創業。既に今年1月に開発中のヒト型ロボットの動画を公開。ロボットは自ら作業ミス、行動パターンを改善できる機能も有しています。
ユニコーン(創業10年未満、市場価値10億ドル以上の未上場企業)は米国が500社以上、中国も200社以上を擁しますが、日本はディープラーニング技術の「Preferred Networks」やニュースアプリの「スマートニュース」等、僅か7社。この違いにはそれなりの背景があります。
岸田首相は2022年を「スタートアップ創出元年」とし「イノベーションの鍵となるスタートアップ投資を5年で10倍に増やす」と宣言。スタートアップ担当大臣を任命し、経産省がスタートアップ関連の支援策を集約した冊子を発表、東京都もTokyo with STARTUPと銘打ってスタートアップとの協働を推進。
内閣府に設置されたイノベーション・エコシステム専門調査会では、ベンチャーキャピタルの機能強化、起業家の支援・保護、起業家マインド教育、人材流動化促進策等々を打ち出すなど、国や自治体によるスタートアップ支援策は花盛りです。
現時点において注目されている国内支援組織を示すと、第1は2018年6月に立ち上げられた「J-Startup」。METI(経産省)JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)NEDO(国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構)が事務局となり、潜在力の高いスタートアップに集中的支援プログラムを提供。海外進出も支援しています。
第2はスタートアップ支援だけでなく既に起業した経営者の支援も行う2003年経産省補助事業としてスタートした「ドリームゲート」。日本最大の企業支援組織です。起業セミナー、経営者向け無料相談サービス、資金調達等々、様々な相談を受け付けています。
第3はNEDO運営の「StarT!Ps from(スターティプス)」。資金調達やマッチングを支援するポータルサイト。支援事業や支援制度のメニューや利用者の成果を閲覧できる有用なサイトです。
第4は東京都中小企業振興公社が立ち上げた「東京創業ステーション」。起業経験者による無料相談、起業家同士の交流、起業ゼミ等々、起業に関する企画をほぼ毎日開催しており、起業を志す人が気軽に利用できる施設となっています。
海外からも日本に参入しています。英国のCIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)も虎ノ門ヒルズに2020年10月に拠点開設。小規模プライベートオフィスはほぼ満室状態です。
米国カリフォルニア州にある起業家育成プログラム「Y-Combinator(YC)」は世界的アクセラレーター(スタートアップ養成所)です。YCは3ヶ月かけて起業家にスタートアップのノウハウを教え、その後は投資家の集まるイベントでプレゼンの機会を提供。ここまで一貫した支援体制を整えているアクセラレーターはまだ日本にありません。
世界では大学発のスタートアップも多い中、日本は大学の体制にも課題が山積しています。博士課程の研究者に起業のノウハウを提供する体制や、研究成果をビジネスに繋げる専門組織、人材、体制が整っていません。
東大、京大を筆頭に特許収入の多い上位10大学の合計額は年平均24億円(2021年までの5年間)。ノースウエスタン大学等米国上位10大学(1178億円)の49分の1。特許取得数は1320件と米国(2347件)の半分超であることを勘案すると、ビジネス化する力に大差があります。
1件の特許を取得するのに要した研究費は日本の約10億円に対し米国は12億円弱とほぼ拮抗。しかし特許収入には大きな差。研究に同程度のコストを投下しているのに、日本の大学は研究成果をビジネスに繋げることができない実態が明らかになっています。因みに、企業に活用されている大学の特許は2割に達しません。
大学内で特許戦略を立案できる人材は皆無に等しく、研究成果を商業化、ビジネス化できるか否かを検証するための予算も各大学数百万円程度。これでは起業しようがありません。
知財で稼ぐには大学内に専門人材や組織、施設が必要となります。全大学のうち、研究者の起業を支援するプログラムがあるのは8%、特許の専門家である弁理士を配置している大学も5%に過ぎません。
米欧有力大学では特許やビジネス戦略の専門人材を揃え、起業支援の施設も充実しています。研究者が特許の書類や論文を書く前に専門家が競合する特許を調査分析し、ビジネス化するにはどの特許と組み合わせたら最適か等々の知財戦略を企画立案。それがベンチャーキャピタルの投資判断にも寄与し、スタートアップを立ち上げやすい環境に繋がっています。日本の大学とはかなり状況が違います。
文科省の大学支援は研究に重点を置き、研究現場には年数千億円の助成がある一方、成果をビジネスに繋げる仕組みづくりには十分に予算がつかず、事業化支援予算は200億円程度にとどまっています。
大学発の起業、ベンチャー、スタートアップをどのように推進していくか。正念場というよりも、「完全に負けている状態からどう立ち上がっていくか」という挑戦を始めなくてはなりません。
タイトルの「⊃」は集合の記号です。誤字・入力ミスではありません。左側は右側を包含するという意味です。「スタートアップ」の定義は明確ではありませんが、新しいビジネスモデルや技術革新によって「急激な成長」の実現を狙う企業というところでしょうか。
米国シリコンバレーでは「急激な成長」とは「週次成長率7%」とされ、当該企業の目標指標(KPI)が7%超で成長し続けることがスタートアップの証だそうです。
「T2D3」という言葉も聞きます。売上の伸びが最初の2年はTriple(3倍)、次の3年はDouble(2倍)、5年で72倍になるという成長イメージです。
成長以外の要素もあります。スタートアップは何らかの社会問題を解決するために新しいアイデア、サービス、製品を市場に投入し、イノベーションを起こします。
例えば、Uberは都市の交通問題を解決するために新しいアイデアとサービスを提供しました。テスラはEVによってクリーンエネルギーへの移行を推進し、Zoomはコロナ禍下でリモートコミュニケーションのプラットフォームを定着させました。
英語の「Startup」は「行動開始、操業開始」というような意味ですが、日本には「ベンチャー企業」という言い方もあります。
スタートアップとベンチャーが同義語的に使われている感がありますが、スタートアップはベンチャーですが、ベンチャーは必ずしもスタートアップではありません。
「Venture」には「冒険的、投機的」等の意味があり、米国では投資家を「Venture Capital(VC)」と言いますが「ベンチャー企業」という用語はありません。ベンチャー企業は和製英語です。一説には元法政大学総長の清成忠男氏等が新規事業に取り組むことを「ベンチャービジネス(VB)」と呼んだことが起源とされています。
日本のベンチャーは「新しい事業や新しい分野に取り組む新興企業」というザックリしたイメージです。日本では、スタートアップ、ベンチャー、IT企業、中小企業等の用語は定義が曖昧なまま使われています。
日本では「ベンチャー」という言葉が浸透してから、IT業界を中心に「スタートアップ」という言葉も使われるようになりました。以下、「スタートアップ」の要素をいくつかの視点から整理します。
第1に、スタートアップは社会問題を解決するために「ミッションドリブン」な存在であり、新しいアイデア、サービス、製品を提供し、人々の生活や社会にイノベーションをもたらします。そして、社会に新たな価値を創造する傾向があります。
「ドリブン(driven)」は英語の「drive」の過去分詞であり「(何かに)突き動かされた」という意味です。
ミッションドリブンなスタートアップは企業の目標やビジョンが明確であり、それに共感するモチベーションの高い社員が集まります。最近では社会問題解決型のスタートアップを「インパクトスタートアップ(Impact Startup)」と言うこともあります。
第2はビジネスモデル。スタートアップの革新性はビジネスモデルにあります。新たなアイデア、サービス、製品を市場に投入し、新たなビジネスモデル、価値、イノベーションを創造します。既存の企業が発掘、獲得できていなかった新たな需要を開拓し、その先行メリットを占有することが成功の秘訣です。
第3はスピード感。成功するスタートアップは短期間で急成長を遂げます。スタートアップが新たなビジネスモデル、新たな市場創造に成功する場合、そこにはライバル企業は存在しません。そのため、スタートアップはその需要を独占するかたちで爆発的かつスピーディな成長を遂げます。
第4はJカーブ。スタートアップは当初は赤字を抱え込み、その後急成長します。収益を上げ始めるまでの間は「デスバレー(死の谷、Valley of Death)」と呼ばれ、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達が生命線です。資金が尽きる前に成長し始めると収益曲線は「Jカーブ」を描きます。
収益曲線の形状の違いからベンチャー企業は「スタートアップ」と「スモールビジネス」の2つのタイプに分類されます。
通常のベンチャー、あるいはスモールビジネスは時間軸に比例した直線的な形状を示す傾向がありますが、スタートアップは上述のとおり「Jカーブ」です。デスバレーを越えて事業が軌道に乗ると急激に成長し、短期間で累積赤字を解消します。
通常のベンチャーやスモールビジネスは自己資金や銀行融資等の一般的資金調達方法に拠ることが多い一方、スタートアップはベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から資金を集めます。
第4はEXIT(出口)戦略。スタートアップは将来的なリターンを期待できるEXITを見据えた戦略を示さなければ、資金を集められません。IPO(株式上場)と M&A(合併買収<売却>)が基本的な出口戦略です。
以上の整理に基づけば「スタートアップ」はミッションドリブンで新たなビジネスモデルとイノベーションを創造し、急激な成長と明確なEXIT戦略を実現する企業です。スタートアップは必ずしもIT企業とは限りませんが、今やどのようなサービスや製品もIT技術とは密接不可分です。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家やメンターがスタートアップを支援しますが、パターンは3つあります。因みに「メンター(mentor)」とは「相談者」「助言者」「指導者」という意味で、ギリシャ時代にオデュッセウス王の助言者や息子テレマスコの指導者を務めた「賢者メントール」に由来。助言を求める側を「メンティ」とも言います。
なお、ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家は規模が異なります。エンジェル投資家は自己資金のため投資額は小規模です。
第1のパターンは週1回以上会う「ハンズオン」。会社に行ったりミーティングに参加して事業や経営の中身を指導、支援します。濃淡はありますが、共同経営者的イメージです。
第2は投資した後は放置する「ハンズオフ」。ハンズオンとは逆に経営は起業家に任せます。エンジェル投資家の大半はハンズオフです。
第3は必要に応じてサポートする「ハンズイフ」。必要な時に相談に乗ります。平時は頼ることのない警察や病院のような関わり方です。
スタートアップの評価指標にも変化が見られます。かつては成長性や実績が注目されましたが、最近では「バーンレート(Burn Rate)」や「ランウェイ(Runway)」に着目。
バーンレートは直訳的には資金や現金の「燃焼率」となりますが、1ヶ月当たりのコスト(または支出)を意味します。例えば半年間で3000万円支出しているスタートアップのグロスのバーンレートは1ヶ月500万円です。
1ヶ月当たりのネットバーンレートは、上記のケースで半年間に600万円(月平均100万円)の売上げがあれば差引き400万円となります。
高いバーンレートは投資対象としてマイナス要因です。しかし、バーンレートが低くても実行スピードが遅いスタートアップも魅力がありません。理想は「低いバーンレート」と「速い実行スピード」の組み合わせです。
そうした観点から「バーン・マルチプル」という指標も注目されています。企業が資金を効果的に使っているかを評価する指標であり、ネットバーンレートをARR(Annual Recurring Revenue)で除します。
ARRは毎年継続的に得られる売上げを意味し「年間経常利益」「年間定期収益」と呼ばれます。 サブスクリプション(継続購入)サービスを導入しているスタートアップにとっては特に重要な指標です。
ランウェイは「残りの資金」をネットバーンレートで除した指標であり、あと何ヶ月で資金が尽きるかがわかります。
スタートアップを財務指標だけで判断すると将来性を見誤ります。後述するように、スタートアップは各々ミッション(使命)やマイルストーン(目標)を持っています。それらの意義や達成に向けた熱意と実行力は財務指標では測れません。
日本のスタートアップの規模は米国や中国に比べると極めて小さいのが実情です。米国ではGAFA等のスタートアップが企業の世界時価総額トップ10の6社を占めるほか、ウーバー(Uber)、エアビーアンドビー(Airbnb)、スラック(Slack)等、GAFAに続くスタートアップも続々とIPOを実現。米国上場企業が新たに創出する雇用の4割がスタートアップによるものであり、米国経済を牽引しています。
日本でもメルカリやラクスル等1000億円規模のIPOに成功するスタートアップも現れつつありますが、時価総額トップ10には1社も含まれていません。IPOやM&AによるEXIT成功例はまだ少ない状況です。
日本のスタートアップには2つの課題があります。第1は投資規模が小さいこと。日本の未上場企業への投資額は約4千億円。米国は約24兆円、日本の60倍です。日本のエンジェル投資家は約1万人、投資額は約300億円、米国の約3兆円の100分の1。GDP比で比較すると韓国の半分です。
GDP比のベンチャーキャピタル投資額は、最も高いのが中国0.79%、次いで米国0.4%、日本は0.03%しかありません。
投資額の差はスタートアップの成否に影響します。2013年頃からスタートアップ投資が急増している中国。例えばテンセントは2019年末までに投資した800社のうち70社が株式公開し、160社以上が評価額1億ドル(約104億円)を突破。その勢いで2020年にテンセントは168社に1.8兆円を投資。1社で日本全体の年間投資額を上回りました。
第2に起業を志す人材が少ないこと。若者は大企業志向が強く、リスクを負ってスタートアップに挑戦する人が登場しにくい社会です。新卒採用を重視する企業が多く、失敗した後に企業に就職することが難しい社会であることも、スタートアップの阻害要因です。
米国では40歳以上の人が企業からスピンアウトし、経験や人脈を活かしてスタートアップに挑戦するケースも多い一方、日本では「スタートアップは若い人」というイメージです。
米国のスタートアップはシリコンバレー等の西海岸が中心でしたが、今やニューヨーク等の東海岸でも活発。その契機は2008年のリーマンショックです。倒産やリストラでフリーになった金融界等の若手・中堅層が「起業」を選択したからです。
日本の場合、大企業が苦境になっても国が支援して事業継続するケースが目立ちます。その結果、人材の流動性は低く、米国のような展開にはなりません。また、米国では3年程度で転職するのが普通であり、転職はキャリアアップと考えるため、人材流動性が高く、プロフェッショナル人材の層が厚くなっていきます。
中国にも特徴があります。中国では多くの分野が「オンライン化」「デジタル化」されています。買物、宅配、配車、医療、学習等々、あらゆる分野に及んでいます。
リアルビジネスがEC(電子商取引)を始めるのではなく、ECからスタートした事業者が事業展開の一環として実店舗を出すという従来とは逆のビジネスモデルが定着しています。その影響もあって、中国ではコーディング(プログラミング)のできる人数が桁違いに多くなっています。インドも中国と似た状況です。
スタートアップの戦略要素は、市場・人材・資金・技術・ビジネスモデル・修正力の6つ。「修正力」とは試行錯誤を繰り返しながら事業を導いていく能力です。状況によって臨機応変に戦略を工夫できる弾力性、フットワークの軽さとも言えます。
中国のスタートアップは、まずアプリ等のサービスを提供してユーザー数を増やし、その後に収益を上げる方法を考えるそうです。ビジネスは「客数×単価×利用頻度」ですから、まず客数を増やし、その後に単価や利用頻度が高いサービスや機能だけを残していく、「走りながら考える」という経営パターンと聞きました。
日本では、計画を綿密に立て、十分に準備して事業を開始します。スタートの段階で戦略やビジネスモデルが固定的になりがちなため、「修正力」が低いと言われています。
さらに「修正力」の違いは、失敗に対する包容(許容)度や判断基準の違いにも関連します。日本は一度の失敗がブランドイメージや取引先との信頼関係等に大きなダメージを与え、「失敗コスト」が高い社会と言えます。
一方、中国は成果主義が色濃く、失敗を繰り返しても結果的に成果を出せば評価されます。それが試行錯誤し易い社会環境に繋がっています。米国と似ています。
成功すれば評価されるのは日米中とも同じです。しかし、挑戦して失敗した場合、そして何もしなかった場合の評価については差があります。
日本では何かに挑戦し、失敗した場合にマイナス評価を受けます。一方、米国や中国では挑戦していれば、失敗したとしてもある程度評価されます(と、よく聞きます)。
逆に米中では何も挑戦しない「現状維持」は「失敗」と見做され、マイナス評価を受けます。日本では挑戦せずに失敗しなければ、一定の評価を受けます。このような社会の価値観の違いが、日本と米中両国との大きな違いを生んでいると思います。
日本では「PDCA(Plan、Do、Check、Action)」が重視されますが、中国では「TECA(Try、Error、Check、Action)」という言い方をするそうです。
スピードが重視されるスタートアップの世界では「PD」と「TE」の違いは決定的です。中国が米国を追随してユニコーン数が増えている背景は、市場規模や資金力のほかに、こうした社会の価値観、ビジネスカルチャーの違いが影響しているようです。
日本では「起業」をネガティブに捉える人も少なくない気がします。自分の子供が「起業する」と言い出したら反対する親もいるでしょう。「学校を卒業したら企業に就職」というキャリア以外に「起業」も選択肢として考えることが必要です。
アントレプレナーシップ(起業家精神)習得には、学校で学ぶだけでなく、実践も不可欠です。起業家が集まるインキュベーター施設やイノベーションセンターのような場所を見聞したり、スタートアップでインターンをすることも良い経験になるでしょう。
「グローバルな視点に欠ける」日本人の行動特性も影響しています。米中のスタートアップは最初から世界市場を視野に入れています。日本は国内市場での成功に力点を置きがちですが、事業が軌道に乗った後に世界進出するのでは遅いと言えます。早い段階で世界市場を視野に入れていれば、自社のサービスやプロダクトを世界規模で展開し、コストダウンや技術革新を追求できます。
シリコンバレーには「山師のDNA」があると言われます。契機はゴールドラッシュ。全米だけでなく世界中から金鉱脈を目指してサンフランシスコ周辺に移住者が流入。あっという間に人口が100倍になりました。
つまり、人口の99%が一攫千金を狙う山師的マインドを持った人々で構成された特殊性を背景に、そこからシリコンバレーが生まれ、スタートアップ、IPO・M&A、エンジェル投資という潮流につながり、「スタートアップのDNA」が形成されています。
過去にEXITを経験した年配者もエンジェル投資をしており、投資家やメンターの層が厚く、日本とは比較になりません。彼らの目的はリターン獲得だけでなく、若い世代やスタートアップを純粋に支援したいという思いも強いそうです。
日本が一朝一夕で真似できることではありません。「スタートアップのDNA」を生み出すには、遺伝子操作か進化かゴールドラッシュ的出来事が必要です(苦笑)。
(了)