政治経済レポート:OKマガジン(Vol.532)2024.4.9

予算審議も終わり、法案審議が本格化しています。今国会には、「技能実習制度」を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する法案が提出されています。出入国管理法、難民認定法等の改正案です。メルマガ402号(2018.6.21号)で技能実習制度の「本音」と「建前」の使い分けを止めるべきと記し、国会においても再三そのことを指摘してきました。漸く「本音」を少し認めた見直しが行われます。少々長くなりますが(いつも長いですが<笑>)、重要な話題なので整理しておきます。


1.「本音」と「建前」

技能実習制度の経緯について振り返ります。創設の契機は1960年代に海外進出した日本企業が現地社員を日本に招聘し、技術や知識を教育。帰国した現地社員が母国で活躍したことに端を発し、政官財界が協議して1981年に「研修」という在留資格を創設。

これが発展し1993年、「途上国の外国人労働者が技能・技術を修得するため」という大義名分を掲げて技能実習制度を創設。当初の就労期間は最長2年、1997年に3年に延長。

技能実習の「建前」は人材育成、国際貢献、技術移転ですが、「本音」は安い労働力確保。その結果、技能実習生の低賃金、賃金不払い、劣悪労働環境、失踪等が社会問題化。母国側でも、技能実習生が借金を負って送出機関に斡旋料を支払う等の問題が常態化。

徐々に批判が高まったものの、抜本的見直しのないまま2017年に就労期間は5年に延長。

2019年4月、技能実習の次の段階として「特定技能制度」がスタート。最長5年の期限がある「1号」と熟練技能を条件に事実上永住が可能な「2号」。技能実習と違って転籍・転社も可能です。対象は建設、農業、宿泊、介護、造船業等、人手不足が著しい12分野。

政府は当初5年間で最大34.5万人の受入を企図。2025年に50万人超の就労を想定。建設では25年に約30万人の特定技能労働者を確保(労働力不足見通しは78万人から93万人程度)、農業では同2.6万人から8.3万人を確保(同4.6万人から10.3万人程度)、介護では年1万人程度受入れ(同55万人程度)を想定していました。

しかし、開始直後に新型コロナ感染症に直面し、新規入国がストップ。コロナ禍収束後は徐々に増えて23年末で20.8万人になったものの、当初想定の約6割です。

そこで技能実習制度を見直し、外国人材受入促進を企図して2022年12月14日から16回に亘って有識者会議が開催され、2023年11月30日、最終報告書を法務大臣に提出。

報告書に基づき、2027年度から技能実習制度を廃止し、育成就労制度を創設。「人材の確保と育成」を掲げ、人手不足補填が目的のひとつであることを明定。しかし「育成就労」というネーミングに依然として「建前」の残滓が垣間見えます。

育成就労3年間で一定の技能水準に達し、特定技能への移行を促す狙いです。政府は今後5年間で特定技能を82万人(過去ピークだったコロナ直前の2倍)に増加させ、その最中の2027年度に「育成就労」をスタートさせる計画です。

政府は特定技能制度開始時、2号対象を建設と造船・舶用工業の2分野に限定。昨年8月に対象をほぼ全分野に拡大。去る3月29日、自動車運送等4分野にも対象を広げました。

従来の特定技能対象12分野のうち、唯一2号がないのが介護。それは、介護には就労期間上限なしで家族とも暮らせる在留資格「介護」があるためです。但し、介護ビザを取得するには介護福祉士の国家資格に合格する必要があり、ハードルが高いのが実情です。

技能実習制度によって多くの職種で実質的な単純労働受入が行われており、日本は既に外国人労働者なしでは成り立たない国になっています。

外国人在留資格は5つに分かれます。第1は就労目的の在留資格。学術、芸術、経営等の専門家が対象ですが、高度専門職という分類もあります。日本の大学卒等の事項にポイントを付し、ポイントが一定以上になると在留資格を得られます。

第2は非就労目的の在留資格。ここには、技能実習や留学が含まれますので、非就労目的と言いながら、技能実習や短時間労働(留学生等に認められている資格外活動)によって実質的な外国人労働者を生み出しています。

第3は身分に基づく在留資格。永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4分類です。以上の3つのほかに、特定活動(外交官の使用人、ワーキングホリデー、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補等)、及び外交・公用の2つも加え、外国人の在留資格は5つに分けることができます。

昨年末現在の外国人在留者は341.1万人。もちろん過去最高です。在留資格別には、永住89.2万人、技能実習40.5万人、技術・人文・国際業務等36.2万人、留学34.0万人、特別永住28.1万人がベスト5。それに続き、家族滞在26.6万人、特定技能20.8万人、定住21.7万人、日本人配偶者14.8万人。

国別では、中国82.1万人、ベトナム56.5万人、韓国41.0万人、フィリピン32.2万人、ブラジル21.2万人がベスト5。このほか、10万人超はネパール17.6万人、インドネシア14.9万人。

居住地では、東京66.3万人、愛知31.1万人、大阪30.1万人、神奈川26.8万人、埼玉23.5万人がベスト5です。

短期滞在者も含む外国人比率は4%超に達しており、労働者の4人に1人が外国人。既に米国並みの移民国家ですが、政府はそれでも「移民政策とは異なる」と強弁しています。

国際的に合意された「移民」の定義はありません。最もよく引用される定義は、国連統計委員会に提出された国連事務総長報告(1997年)に記載されたもの。すなわち「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12ヶ月間当該国に居住する人のこと」です。

国際移住機関(IOM)は「自発的に他の居住地に移動する人」を「移民」としています。戦争・内乱や政治的弾圧による難民は「移民」ではありません。

日本の外国人労働者のほとんどはこれらの基準に該当します。統計上は明らかに「移民」。技能実習生や資格外活動の留学生はもちろん、「新資格」「新々資格」による外国人労働者も「移民」に該当します。

「移民政策とは異なる」と詭弁を弄することは、「建前」と「本音」を使い分けているにすぎません。人手不足対策として外国人労働者を受入れる育成就労制度開始を機に、実質的な移民政策の拡大による問題も直視し、その対策を講じることこそ重要です。

メルマガ402号でも指摘しましたが、日本人の雇用・賃金への影響、社会保障制度への影響を直視する必要があります。米英では、低賃金の外国人労働者増加が国内競合労働者の賃金に下方圧力をかけるというのが一般的認識です。

社会保障制度の悪用にも要注意です。例えば、技能実習生は実習先の組合健保または協会けんぽに加入しますが、被保険者の3親等内親族も保険対象。つまり、母国在住家族の医療費も組合健保や協会けんぽが負担。

その際、対象親族の年収制限は年間130万円。国によってはそれなりの高額であり、母国で普通に働いている親族が全て保険対象になります。技能実習生のみならず、就労ビザで入国している外国人労働者のうち、企業勤務者は同様です。

一方、就労ビザで入国した企業勤務者以外の者(経営者等)、及び非就労ビザで入国している留学生等は国民健康保険に加入できます。この場合、親族は保険対象にならないものの、母国への帰国時や海外渡航時に受けた医療費が海外療養費として保険対象となります。

そのため、日本の国民健康保険を利用することを目的に、まずは他の理由で就労ビザまたは非就労ビザを取得して入国するケースが増加。中国では、そうした入国及び国民健康保険加入を斡旋する業者も存在しています。

2.育成就労制度

新たに創設され、2027年度施行見込みの育成就労の概要をいくつかの視点から整理してみます。第1は制度の目的です。

技能実習は建前上「国際貢献・技術の移転」が目的。一方、育成就労は「人材確保と人材育成」を明確化。人手不足を補う目的であるという本音を打ち出しました。国際的な人材獲得競争が激化する中、外国人労働者を呼び込むことが主眼です。

新制度開始前に来日した技能実習生は所定期間を終えるまで最大3年間(つまり2027年まで)在留を認める暫定措置を行い、事実上育成就労と同じ扱いをします。

育成就労における人材育成目的も、技能実習のような「母国発展のため」という綺麗事ではなく、日本の特定技能1号に移行可能な人材確保を明確化しています。

育成就労期間は3年間。より技能レベルが高く、最長5年働ける「特定技能1号」に移行し易くし、長期就労促進を企図。その後、さらに熟度の高い「特定技能2号」を取得すれば、在留資格更新に制限がない事実上の無期限滞在(永住)や家族帯同が可能となります。

第2は受入可能な職種です。技能実習の「88職種161作業」に対し、育成就労は「特定技能と同一分野」です。特定技能1号に移行できる人材育成が目的のためです。

その違いから、技能実習では受入可能でも育成就労では受入不可の職種が出てくる可能性があります。例えば、繊維・衣服、コンクリート製品製造、ゴム製品製造、印刷、スーパーマーケット内食料品製造、 輸送系機械・器具製造、紙器系製造、木材加工等です。

当該職種に関して、今後特定技能1号の受入可能分野に追加する動きが出てくるでしょう。特定技能1号は建設業、農業、宿泊業等が対象でしたが、そうした事情を映じて既に3月末に自動車運送業や鉄道等4分野を追加。今後もこうした動きが続くと予想します。

第3は転職・転籍の扱いです。技能実習では転職・転籍は原則不可。一方、育成就労では以下の諸条件を満たす場合には転籍可能です。

同一受入機関における就労期間が1年超であること、技能検定基礎級及び日本語能力検定A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格していること、転籍先となる受入機関の在籍外国人に占める転籍者割合が一定以下であること、転籍に至る斡旋・仲介状況等を確認できること等々です。

斡旋業務はハローワークと監理支援機関等に限定し、民間仲介業者は不可。違法な悪質ブローカー排除のため、不法就労斡旋業者を罰する不法就労助長罪の法定刑を「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金」に引き上げます。

また、育成就労として配属後2年未満で途中帰国した場合、前回と異なる分野で育成就労として再来日することも可能です。

第4は移行条件です。技能実習は「受入れ前6ヶ月以上又は360時間以上の講習」で就労可能であり、技能実習2号への移行は「技能検定基礎級合格」、同3号への移行は「技能検定3級合格」が条件です。

技能実習は高い日本語能力を要求していません。日本語能力試験「N4」程度(5段階の上から4番目)を想定していますが、実際は受入業種毎に業務上必要な日本語能力水準を考慮して定めるとの「建前」。学習は業界裁量、本人裁量というのが「本音」です。

技能実習に比べて育成就労では日本語能力の比重が上がっています。技能実習は母国の発展を担う人材育成が目的でしたが、育成就労は日本国内の人材確保を目的としていることから、日本語能力への要求が大きくなっています。

育成就労は受入前にN5レベルの日本語能力を求められ、受入後1年以内に技能検定基礎級合格、新たな制度から特定技能1号への移行は技能検定試験3級等または特定技能1号評価試験合格、日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)合格が条件。

移行を後押しするため、受入企業は業務や日本語能力の教育目標等を定めた「育成就労計画」の作成を求められます。

第5は支援・保護・監督のあり方です。技能実習は外国人技能実習機構が管轄。育成就労は外国人技能実習機構を改組し、外国人支援・保護機能を強化した新たな機構に衣替えします。現在よりも厳格な監理下で制度運営を行います。

新機構、出入国在留管理局、労働基準監督署の連携が強化され、新機構には育成就労や特定技能の対象外国人に対する相談支援業務を追加します。

現在の監理団体には外部監査人設置を義務付けるほか、育成就労では「監理支援機関」と改称し、許可基準を厳格化。やはり外部監査人設置を義務化し、受入企業と密接な関係にある役職員を廃し、中立性や独立性を確保。育成・支援体制を強化します。また、二国間協定(MOC)に基づき外国人の母国の送出機関の取締りも行います。

一方、外国人労働者の長期在留、永住者増加を見込み、永住許可制度も見直します。故意に税金や社会保険料の納付を怠った場合等に、永住許可取消を可能とする規定を新設。現在は虚偽申告で永住権を得た場合等を除き、永住許可は取消すことができません。

中長期在留外国人に携帯を義務化している在留カードとマイナンバーカードを一体化した「特定在留カード」も発行。2025年度に希望者に交付を始めます。

第6は受入人数枠。技能実習は受入企業の規模によって上限がありますが、育成就労もこれに準拠します。また、特定技能と同様に分野毎に人数枠の上限が設定され、育成就労全体の合計人数は計画的に運営されます。

3.外国人統合政策

主要国の外国人労働者受入についても、6つの切り口から整理してみます。以下、国名は漢字1文字で略称します。

第1は受入人材のカテゴリー。各国とも概念的には、①高度人材、②中程度専門人材(いわゆるskilled)、③非熟練労働者の3つに大別。総じて受入の中心は②ですが、実際には①と②、②と③の境界は曖昧です。

②の人材受入の場合、予め雇用主が明確であることが求められ、求職目的の入国は原則不可の場合が大半。一方、①限定の受入の場合は雇用主未定でも許容される傾向があります。独では、大卒者・認定職業訓練修了者には求職目的の半年滞在許可が付与されます。

②の人材受入に際して、自国労働者への配慮等から職種指定しているのは英豪韓。英は職種毎の給与水準下限も規定。豪では国家技能委員会及び移民担当大臣が労働力不足職種リストと技能移民職業リストを策定して公表しています。

米独仏蘭は同種リストは明示していませんが、対象者の学歴・保有資格、職務、給与水準等の基準を設けて受入範囲を限定。例えば、米のEB-2(知的労働者)は「学士号以上の専門家、科学、芸術等の分野で特出能力を有する者」、H-1B(特殊技能職ビザ)は「科学、薬学、医学・衛生、教育、生物工学、ビジネス等の特殊技能を要する職業に従事する学士号以上の者」と定めています。

米のEB-3(専門職・熟練・非熟練)も労働力不足分野を特定。蘭は労働力不足分野の分析を行っているものの、外国人労働者受入に際してとくに考慮していないそうです。

二国間協定による受入を行っているのは仏。55件もの個別協定により①及び②の受入実施。独も2016年以降、西バルカン諸国(アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア)出身者を正式資格なしで入国させ、うち約6割が熟練労働者や専門家として雇用されているそうです。

③に関しては、欧州は欧州経済領域(EU加盟国及びノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)に属する各国労働者に域内他国での就労の自由を保障。その結果、中東欧諸国労働者が域内各国の③及び季節労働者(特に農業分野)の供給源となっています。

英はEU離脱により中東欧諸国労働者の受入が困難化したため、季節労働者の受入制度を再開。米でも労働力不足分野の③及び農業分野の季節労働者を受入。豪では季節労働や家事労働において③を受入れています。

韓は2004年導入の「雇用許可制度」に基づいて労働力不足分野に③を受入。外国人労働者受入の9割が③であり、主な業種は製造業、農畜産業、建設業等です。

労働力不足が顕著な職種への対応として、独は介護人材獲得を目的とする域外(第三国)募集を行っています。英も比との間で看護師受入に関する協定を締結しています。

なお、米豪では永住権を伴う制度と期限付受入制度を併用。その他主要国は一定年限を設けつつ、延長等で所要滞在期間を超えれば永住権を認めるという仕組みが一般的です。

第2は受入ルール。受入諾否を判断するために、学歴・職歴・スキルレベル・賃金水準・労働需給等を勘案します。

上述のとおり、各国における②の受入は原則として雇用先が確定していることを要します。予定雇用主は対象者の受入許可申請を行い、入国後も雇用関係終了まで責任を負います。英豪では外国人労働者の雇用主となるには事前認可取得が義務付けられています。

自国労働者への配慮から、米蘭豪韓では雇用主が国内募集では労働者を確保できなかったことを証明する「労働市場テスト」を申請時の要件とします。仏独では、雇用主の直近求人状況、地域労働需給等を考慮し、申請を却下することもあります。もっとも、独では専門技術者の受入促進のために労働市場テスト適用を一部廃止。英でもEU離脱に伴って労働市場テストを廃止しています。

米H-1Bでは学士号以上が要件であり、職歴や職務内容に関する具体的要件は設けられていません。雇用主は連邦労働省への賃金・労働条件等に関する誓約書提出が義務付けられ、その内容が自国労働者の不利益にならないことが承認要件です。

独の「専門人材」は学士号以上か公認職業訓練資格保有が要件とされ、職務は必ずしも限定されません。賃金水準は同等専門技能を持つ自国労働者と同等であることが求められます。蘭の「知的労働者」は「高学歴」が要件であり、職務や経験は不問。賃金水準は年齢層に応じた規定額以上であることとされています。

豪の「一時的技能不足」では、受入可能職務が労働力不足職種リストや「労働協定」(政府と企業・産業間の協定)により予め限定され、従事予定の職務に必要な技能保有、2年以上の実務経験が要件。教育資格に関する規定はありません。賃金水準については当該職務の平均的額が参照されます。英の「専門技術者」も受入に際しては従事予定の職務レベルに主眼が置かれ、教育資格は必須要件ではありません。賃金水準は規定の下限額以外に賃金統計(当該職種実勢賃金額の8割)が参照されます。

仏では保有資格や職務水準等の基準は示されていません。当局が労働需給等を勘案のうえ、採用予定外国人の職能・経歴・資格が求人職に相応しいか否かを申請毎に判断。

韓の「雇用許可制」は③受入が主眼。教育資格や職務、経験等に関する基準はなく、業務に応じた技能水準、韓国語能力により選抜が行われます。

第3は外国人労働者への各種施策、受入後の語学教育、職業能力開発。米では移民や季節的農業労働者に対する職業訓練制度として「全国農業労働者仕事プログラム(NFJP 、National Farmworker Jobs Program)を提供。連邦政府が州の職業訓練に助成金を拠出し、移民難民等に対する英語教育を法律に基づいて各地教育機関等で実施しています。

英は入国後の能力開発は基本的に想定していません。地方自治体が自主的に外国人向け英語コースを提供している事例はあります。

豪では移民と新規入国者に対して国・州・自治体各レベルで「全国定住フレームワーク」を提供し、言語・雇用・教育・訓練・住宅等に関する支援サービスを展開。

独では過去に③に対する社会統合策を怠った反省から、難民・移民・外国人労働者に対する社会統合策である「統合講習」(独語・市民教育等)に注力。

仏では永住希望外国人に対して「共和国統合契約」に基づく仏語研修及び市民訓練を実施。学歴向上、資格取得、専門的職業経験習得を支援し、統合支援を行っています。

蘭では永住希望者に対する「市民化プログラム」を提供し、蘭に関する知識や蘭語の習得を支援。その後、外国人労働者は市民課試験に合格することが求められます。

韓は雇用許可制に基づいて入国した外国人労働者に対して、職業訓練、職場文化・職場倫理、生活に必要な諸法規等の教育を実施。

第4は外国人労働者の差別、人権侵害への対応。各国とも外国人労働者にも自国労働者と同様の労働法上の権利を保証しています。米は外国人労働者に対する雇用差別を禁止。英は平等法、現代奴隷法により差別禁止、奴隷労働・人身取引の取締強化を明示。蘭では外国人雇用法等により、保護とともに社会保障制度に関連する監督も行っています。

豪では、外国人労働者を含む全ての労働者に公正労働法、差別禁止法やその他関連法規を適用。内外労働者の区別なく、不当な扱いを受けた場合には人権委員会へ申し立て、調停を受けることができます。

独では2020年に食肉処理工場で新型コロナウイルスのクラスターが発生したことを契機に、そこで働く外国人労働者に対する搾取的労働条件や劣悪な生活環境が明らかとなり、外国人労働者の待遇改善に向けた法改正が行われました。

第5は不況等に伴う外国人失業者への対応。米英は外国人労働者が失職した場合、滞在資格を失い、期限までに滞在条件を満たす別の仕事に就けなければ国外退去が原則。また英では、外国人労働者は公的補助に頼らないことが入国許可条件。そのため、拠出制給付(求職者手当等)は要件を満たせば受給可能な一方、低所得者向け社会保障給付や公的住宅、ホームレス向け支援等は利用不可。

独では、外国人失業者への対応は自国労働者と同じ。失業手当受給には、65歳未満、雇用エージェンシーへの失業登録、週15時間以上の仕事を探し、職業紹介に即応すること、離職前2年間に通算1年以上保険料納付済等の条件を満たしていることが必要。仏では、公共職業安定所による支援を受けるためには登録と居住許可取得が条件。

韓の雇用許可制では勤務先変更は原則禁止。滞在可能期間よりも早く雇用関係が終了した場合、1ヶ月以内に雇用支援センターに申請の上、斡旋を受けて求職活動可能。但し、申請から3ヶ月以内に就労できない場合は出国が義務。

第6は不法滞在、失踪等への対応。英米では、雇用主が外国人労働者の滞在・就労資格を確認できるオンラインシステムが整備されており、不法滞在者を雇用した場合には行政罰、刑事罰の対象となります。但し米では、外国人全般に対する雇用差別禁止を法定しているほか、一定要件を満たす不法就労長期滞在者の地位を合法化する仕組みもあります。

英では、医療、金融、住宅等のサービス提供者に滞在許可の確認を義務付け、不法滞在者の利用を制限して滞在を困難にすることで自発的帰国を促しています。

独では、闇労働税務監督局(FKS)が不法就労、最低労働条件違反、違法な労働者派遣等を摘発。企業への立入検査を行い、労働者の身分証、労働契約書、給与明細、就労時間証明書、社会保険関係申請書等を確認します。

仏では不法滞在者が年々増加している状況を受け、合法化の促進や滞在許可の簡素化を含む対策を進めています。

日本も主要国の動向を参考に「本音」で外国人労働者及び事実上の移民対策を進める必要があります。とりわけ主要国の取組をみると、言語・文化等に関する外国人統合政策の重要性が伝わってきます。日本も「本音」で外国人統合政策に取組むことが急務です。

(了)

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